AIアバターという言葉で検索すると、さまざまなサービスが画面に並びます。自分の写真からイラスト風の顔を作るアプリがあります。画面の人物が文章を読み上げる動画を作るサービスもあります。利用者の質問を聞いて、その場で答えを返す受付の仕組みもあります。出来上がるものがまったく違うサービスが、すべて同じAIアバターという名前で呼ばれています。これが、探している人が迷ってしまう原因です。自分が作りたいものと、それぞれのサービスができることを確かめると、選ぶべきものがはっきりします。
AIアバターとは何かと3つの種類
AIアバターと呼ばれるサービスは、出来上がるものによって大きく3つに分かれます。
顔の画像を作るサービス
自分の顔写真を渡すと、イラスト風や別の画風になった顔の画像が出てきます。この画像は静止画で、動きません。SNSのアイコン、Webサイトのプロフィール画像、資料に載せる人物の絵などに使います。実際にこのようなアプリが複数あり、AIアバターという名前をつけています。
画像が1枚できるだけなのにアバターと呼ぶのか、と感じる人もいます。その違和感は自然なものですが、検索結果にはこの種類も並びます。
話す動画を作るサービス
話させたい台本を入力すると、画面の人物やキャラクターがその内容を話す動画が出てきます。声はAIが作り、その声に合わせて人物の口元が動きます。人物を撮影しなくても、その人が話している映像になります。
社内研修、業務マニュアル、商品の紹介、採用の説明、決算の説明など、決まった内容を繰り返し多くの人に見せる場面で使います。動画作成サービスのNoLangで作れるのも、この話す動画です。
話す内容は、入力した台本で決まっています。AIが自分で内容を考えて話すわけではありません。伝えたいことを一字ずつ決めて話させる道具だと考えてください。
質問に答えるシステム
利用者がその場で質問すると、AIが答えの文章を作り、声と表情をつけて返します。ビルの受付、店頭の案内、Webサイトでの接客などに使います。
このシステムでは、話す内容が台本で決まっていません。利用者の質問に合わせて、その場で答えが作られます。そのため、AIに正しい答えを作らせる元になる情報が必要です。よくある質問と回答をまとめた資料を用意します。また、AIが答えられない質問を受けたときに、人間の担当者へ引き継ぐ手順も決めておく必要があります。なお、NoLangにはこの質問に答える機能はありません。
チャットボット、VTuberとの違い
AIアバターと似た言葉に、チャットボットがあります。チャットボットは、いま見た質問に答えるシステムから、見た目の人物と声を取り除いたものです。画面の枠に文字で質問を打ち込み、文字で答えが返ってきます。
もう一つの似た言葉が、VTuberです。VTuberは、生身の人間が裏側で操作して話しています。画面に映る姿はイラストや立体のアバターですが、声も話す内容も本人のものです。AIが声を作ったり、話す内容を考えたりしているわけではありません。
| 種類 | 何が出てくるか | どんなときに使うか |
|---|---|---|
| 顔の画像を作るもの | 動かない顔の画像 | SNSのアイコン、プロフィール画像、資料の挿絵 |
| 話す動画を作るもの | 台本どおりに話す動画 | 社内研修、マニュアル、商品紹介、採用説明 |
| 質問に答えるもの | 質問に対して声で答えるシステム | 受付、店舗での案内、Webサイトの接客 |
目的から種類を決める
道具の一覧を見てどれを使うか決めようとすると、選べなくなります。世の中には、顔の画像と話す動画の両方を作れるサービスがあります。質問に答えるサービスが、動画を作る画面を用意していることもあります。機能の表から選ぶのではなく、自分が何を作りたいかという目的から考えます。次の3つの問いに答えると、必要な種類が決まります。
伝えたいのは、決まった内容か、その場の答えか
プロフィール画像なら、見せたい姿が決まっています。研修の内容や商品の使い方の案内なら、話す内容が決まっています。伝えるものが先に決まっているなら、顔の画像か、話す動画を選びます。用意するものは、画像なら見せたい姿の写真やイラスト、動画なら話させたい台本です。
駅の窓口や店頭のように、相手からどんな質問が来るか分からない場面もあります。その場で質問に答える必要があるなら、質問に答えるシステムを選びます。用意するものは、AIが答えるための元になる情報と、答えられないときに人に引き継ぐ手順です。
顔は、用意されたものでよいか
特定の誰かの姿にする必要がないなら、サービスにあらかじめ入っている人物の顔から選びます。どの種類のサービスでも、あらかじめ用意された顔の候補があります。
会社の代表者の姿や、自社のマスコットキャラクターの姿にしたい場合は、写真や画像から作ります。用意するものは、顔がはっきり写った写真やイラストの画像です。他人の顔を使う場合は、その人の同意を得る必要があります。
動かない絵で足りるか、話す姿が必要か
SNSのアカウントに載せる絵や、名刺に印刷する絵なら、動かない絵で足ります。この場合は、顔の画像を作るサービスを選びます。
研修の受講者に画面を見せ続けたいときや、画面の向こうから語りかけたいときは、話す姿が必要です。話す動画か、質問に答えるシステムを選びます。このとき用意するものが声です。サービスにある声から選ぶか、自分の声を録音して用意します。
用途から引くと早い
3つの問いをたどらなくても、作りたいものが決まっている場合は用途から引けます。SNSのアイコンやプロフィール画像が欲しいなら、画像を作るアプリです。研修、業務マニュアル、商品の紹介、採用や決算の説明のように、決まった説明を何度も見せたいなら、話す動画を作るサービスです。受付や店舗の案内のように、利用者の質問が最初に来る場面なら、質問に答えるシステムです。決まった内容を動画で届けるだけなら、その場で質問に答える仕組みは必要ありません。
| 質問 | 答えと、選ぶ種類 | 用意するもの |
|---|---|---|
| 伝えたいのは決まった内容か、その場の質問への答えか | 決まった内容→画像か話す動画。その場の答え→質問に答えるもの | 見せたい姿や台本。または元になる情報と引き継ぎ手順 |
| 顔は用意されたものでよいか、自分やブランドの顔が必要か | 用意されたもの→既存の顔。自分やブランド→写真から作る | 顔が分かる写真や画像。他人の顔なら本人の同意も |
| 動かない絵で足りるか、話す姿が必要か | 動かない絵→画像。話す姿→話す動画か質問に答えるもの | 話す姿なら声(用意された声か、録音した自分の声) |
撮影せずに、人が話す動画を作る
話す動画を作るサービスの値打ちは、画面で話している人物を撮影していないという点にあります。カメラの前に立つ人も、収録の日程も要りません。台本を書き、話し手の見た目と声を決めると、その人が話している映像になります。NoLangで作った2本の動画で、実際の仕上がりを確かめます。
1人が解説する
【研修】情報セキュリティの重要ポイント 3選
セキュリティの基礎知識を、正面を向いた人物が順を追って説明する動画に。台本の文字を自社の業務ルールに書き換えると、自社向けの研修動画になります。
情報セキュリティの3つの要素を解説する、38秒の動画です。画面の中央で正面を向いて話している人物は、写真から作られています。この人をカメラで撮ったわけではありません。話す声に合わせて口元が動き、話の進行に合わせて画面の上の見出しが「機密性」「完全性」「可用性」の順に切り替わります。画面の下には、話している言葉と同じ字幕が出ます。
話している中身は、入力した台本のとおりです。台本で決まっているので、言い回しを直したくなっても、撮り直しではなく台本を書き換えるだけで済みます。社内の規則が変わったときも、変わった部分の文章を差し替えて作り直せます。業務の手順や社内研修のように、同じ説明を誰に対しても同じ質で届けたい場面に向きます。詳しい組み立て方は研修動画の作り方でも確認できます。
2人で対談する
睡眠医学に学ぶ疲労回復法
聞き手が質問を投げかけ、専門家が順番に答えていく対談番組のような動画に。質問と回答の組み合わせを自分の商品案内に変えると、紹介動画になります。
聞き手と専門家の2人が話をする、対談番組の形式です。テーマは疲労回復です。元の動画は4分30秒あり、ここでは冒頭の1分間を表示しています。
2人とも実写の人物の姿をしています。冒頭でテーマが画面に示され、次に専門家の肩書と経歴が文字で出ます。そのあとで本題のやり取りに入ります。話す人が交代すると、画面の割り方が変わります。1人が大きく映る画面と、2人が横に並ぶ画面が切り替わります。
この形式は、本来なら2人の予定を合わせて撮影するものです。ここでは、2人分の見た目と声を用意し、質問と回答を台本に書くことで作っています。出演者が増えても、撮影の段取りは増えません。よくある質問への回答をまとめた動画や、受付でのやり取りの見本動画も、同じ作り方で用意できます。
顔と声の用意の仕方
NoLangでは、動画に出す人物を、見た目の「アバター」と声の「ボイス」の2つを組み合わせて作ります。
画面の左側にあるサイドバーの「キャラ作成」を押し、その中にある「キャラクターを追加」を押します。アバターとボイスのそれぞれについて、あらかじめ用意された一覧から選ぶ方法と、自分で新しく作る方法の2通りがあります。
見た目を決める(アバター)
「一覧から選ぶ」を押すと、最初から用意されているアバターの画像が一覧で並びます。この中から気に入った姿を選べます。自分で用意した写真や画像を使いたいときは、「写真から作る」を選びます。ここには2種類の方法があります。
- 写真をキャラ化:手元の写真をもとにして、イラスト風のアバターを作ります。画面には「顔が1人だけ写った、全身が見える写真がおすすめです」と案内が表示されます。
- 画像をそのまま使う:自分で用意したイラストや写真の絵柄をそのまま残してアバターにします。画面には「人物が1人だけ写った、服や装飾がシンプルな写真がおすすめです」と案内が表示されます。画像を読み込んだあと、動かし方を選びます。画像に表情と口の動きをつける方法か、実写のように自然に動かす方法のどちらかを選んで作成します。
声を決める(ボイス)
声についても、選ぶ方法と作る方法の2通りがあります。「一覧から選ぶ」を押すと、用意された声が並びます。それぞれの声にある再生ボタンを押して、音声を確かめられます。声の選び方の基準はAI音声ナレーションの選び方にまとめてあります。
自分で声を用意したいときは、「音声を作る・作り直す」を選びます。録音済みの音声ファイルを読み込ませるか、その場で声を録音します。画面には「30秒で雑音の少ない、1人の声の音声ファイルがおすすめです」と案内が表示されます。具体的な作業の流れはAI音声の作り方で確認できます。
「画像をそのまま使う」で作ったあとの手順
この方法で作ったアバターには、動かすための操作がもう一段あります。アバターを保存した直後の画面に、その案内が表示されます。
まず、作ったアバターを設定して動画を作成します。この時点で作られた動画の中では、アバターは動かず、止まったまま画面に表示されます。動く状態にするには、次の操作が要ります。
動画が完成したあと、その動画の視聴ページを開きます。画面に表示されている「リアルアバターを動かす」というボタンを押します。ボタンを押すと、声に合わせて顔や体が動く動画の処理が始まります。処理が終わるまでには、しばらく時間がかかります。
使う前に確認すること
撮影せずに人が話す映像を作れるということは、その人が実際には言っていない言葉も、映像にできるということです。だからこそ、制作に入る前に確かめておくべきことが3つあります。確認しないまま進めて後から変更すると、完成した動画やシステムを最初から作り直すことになります。
誰の顔と声を使うか
サービスにあらかじめ用意されている顔と声を使うときは、そのサービスの利用規約に書かれた範囲の中で使います。自分自身の顔写真や自分の声を使う場合は、権利の面での制限はほとんどありません。
注意が必要なのは、自社の社員や外部のタレントなど、他人の顔や声を使う場合です。必ず本人の同意を得ておきます。どんな用途で使うのか、自社サイトなのか広告なのか、いつまで公開するのかを伝えます。さらに、その社員が会社を辞めたあとや、タレントとの契約期間が終わったあとに、その動画をそのまま使い続けてよいかも決めておきます。
どこで公開するか
社内研修のように社内だけで見せるのか、自社のWebサイトに置くのか、SNSに投稿するのか、広告として配信するのかによって、守るべき規則が変わります。
SNSの中には、AIを使って作られた動画や画像であることを明示する設定を備えているものがあります。実在する人間そっくりに見えるアバターを使うと、そうした表示を求められやすくなります。また、広告として配信する場合、サービスの利用規約によって使えるアバターの種類が限定されていることがあります。
間違った答えへの備え
質問に答える仕組みを使う場合だけ、もう1つ必要な準備があります。AIが答えるための元になる資料を整理しておきます。また、AIが答えられない質問をされたときに、人間の担当者へ引き継ぐ手順を決めておきます。
画面に人の姿があり、声で案内されると、利用者は文字だけのチャットよりも答えを信じやすくなります。間違った案内をした際の影響が大きいため、事前の準備が必要です。
確認する順番
法律の細かい解釈については専門家への相談が必要になりますが、検討を進める手順は決まっています。誰の顔と声を使い、どこで公開するのかを最初に決めます。その使い方が、利用するサービスの規約で認められているかを、制作作業に入る前に確認します。
| 確認すること | 内容 | 確認する相手・場所 |
|---|---|---|
| 誰の顔と声か | 用意された顔や声なら規約の範囲で利用。他人の顔や声なら用途、期間、契約終了後の扱いについて同意を取得 | 本人、使うサービスの利用規約 |
| どこで公開するか | 社内、自社サイト、SNS、広告で規則が変化。SNSのAI生成表示や広告利用の制限を確認 | 公開先(SNSなど)の規則、使うサービスの利用規約 |
| 間違った答えへの備え | 質問に答える仕組みの場合、元になる資料の整備と、答えられない質問を人へ引き継ぐ手順を決定 | 運用の担当者、導入するシステムの提供元 |
自分が作りたいものが、静止した絵なのか、台本どおりに話す動画なのか、利用者の質問に答えるシステムなのか。そこを決めるところから始まります。決まった内容を人の姿と声で繰り返し届けたいのなら、撮影の段取りを組む前に、台本を1本書いてみるほうが早く形になります。