「うちも動画をやろう」と会議で決まった日、参加者の頭にある動画はたいてい一つではありません。 広告担当はYouTubeの再生前に流れる15秒を、SNS担当はInstagramのリールを、営業は商談の冒頭で見せる3分の紹介動画を思い浮かべていて、全員が「動画マーケティング」と言いながら別の施策を指しています。 制作会社に相談してから「思っていたものと違う」となる原因の多くは、動画の出来ではなく、ここにあります。
この認識のずれは、動画マーケティングの定義を調べても埋まりません。 その動画を見る人が今どういう状態で、見た後にどうなってほしいかを先に決めると、置き場所も、作る動画も、見る数字も決まります。 この記事では、動画マーケティングの範囲を「見る人の状態」で整理し、目的ごとに向く手法と見る数字を表にし、よく聞く戦略の枠組みを「最初の1本と続ける2本」に置き直します。 そのうえで、架空の事業で計画を最後まで決め、その最初の1本をNoLangで作った完成動画と一緒に掲載しています。
動画マーケティングとは:広告だけではなく、見る人の状態で範囲を決める
動画マーケティングは、動画を使って、自社を知らない人に知ってもらい、興味を持った人に選んでもらい、選んだ人に使い続けてもらう活動の全体を指します。 動画広告はその一部です。 「動画マーケティング」を動画広告の意味で使う説明も見かけますが、商品ページに置く紹介動画、商談で見せる動画、購入後に送る使い方の動画も、同じ活動の中にあります。 広告だけを全体と考えると、広告費を使わずにできる手法が最初から選択肢に入りません。
なぜ動画なのかは、相手の側から考えると理由がはっきりします。 商品やサービスを調べるとき、検索結果の動画やSNSの投稿、商品ページの再生ボタンから情報を集める人が増えました。 相手が動画で調べている場面では、こちらも動画で答えたほうが伝わります。 市場規模の数字を並べなくても、自社の顧客がどこで何を見ているかを思い浮かべれば、動画を使う理由としては十分です。
範囲を決めるには、見る人の状態を4段階に分けると整理しやすくなります。
| 見る人の状態 | 動画の役割 | 置き場所の例 | 動画の例 | 詳しく扱う記事 |
|---|---|---|---|---|
| まだ知らない | 名前と一言を覚えてもらう | 広告枠、SNSの投稿、サイネージ | 短い広告動画、PR動画 | 動画広告の種類・媒体・効果、PR動画の作り方 |
| 興味がある | 何ができて、何が違うかを理解してもらう | 自社サイト、YouTubeチャンネル、展示会 | 商品紹介動画、サービス紹介動画、会社紹介動画 | 商品紹介動画の作り方、サービス紹介動画の作り方 |
| 比べている | 疑問と不安をなくし、選んでもらう | 商品ページ、商談、メール | よくある質問に答える動画、導入事例、デモ動画 | 本記事の計画例 |
| 使っている | 使いこなしてもらい、続けてもらう | 購入後の案内、サポートページ、社内 | 使い方動画、動画マニュアル | 動画マニュアルの作り方 |
「使っている」状態まで動画マーケティングに含めるのは、使い続けてもらうことが次の購入と紹介につながるからです。 購入で終わる整理にすると、サポートに使える動画が施策から抜け落ちます。
目的を一つ決める:4つの目的で、向く手法と見る数字が変わる
目的は「認知も購入も」全部でよいのでは、と考えたくなります。 ただ、一本の動画に全部を入れると、まだ知らない人には長すぎ、比べている人には具体性が足りない動画になります。 知らない人は名前を覚える前に離れ、比べている人は知りたい答えにたどり着く前に離れるからです。
目的は、見る人の状態に合わせて4つから一つ選びます。
| 目的 | 向く手法 | 置き場所の例 | 長さの目安 | 見る数字(一つ) |
|---|---|---|---|---|
| 知ってもらう | 短い広告動画、SNSの投稿動画、PR動画 | 広告枠、SNS、サイトのトップ | 数十秒 | 再生数、または指名検索の増減 |
| 興味を持ってもらう | 商品紹介、サービス紹介、会社紹介の動画 | 自社サイト、YouTube、展示会 | 1〜3分 | 平均再生時間、または見た後のページ遷移 |
| 選んでもらう | よくある質問に答える動画、導入事例、デモ動画 | 商品ページ、商談、検討中の人へのメール | 1〜2分 | 動画を見た人の申込率、または問い合わせの内容の変化 |
| 使い続けてもらう | 使い方動画、動画マニュアル、新機能の案内 | 購入後の案内、サポートページ | 必要なだけ | サポートへの問い合わせ数の増減、または継続率 |
長さの目安は置き場所と相手の状態で前後します。 目的を一つに絞ると、決まることが三つあります。 何を見せるか(名前と一言か、使う場面か、質問への答えか)、どこに置くか、そして何の数字を見るかです。 置き場所と見る数字の二つが決まれば、動画を公開した後に「効果があったのか」を判断できるようになります。
動画マーケティングの戦略:HHHを「最初の1本と続ける2本」に置き直す
戦略として名前が挙がるのは、Googleが提唱したHHH戦略です。 広く知ってもらうためのHero、続けて見てもらうためのHub、困りごとに答えるHelpの3種類の動画を組み合わせる考え方で、多くの解説がこの3種類をそろえることを勧めています。
ただ、初めて動画を取り入れる会社が、3種類を同時に作るのは現実的でしょうか。 3本分の企画と素材と確認が一度に必要になり、どれか一本の反応を見て残りを直す余地がありません。 3種類は「そろえるもの」ではなく、「どの順で作るか」を決める枠組みとして使うと、計画に落とせます。
| 種類 | 役割 | 向く目的 | 置き場所の例 | 計画例での動画 |
|---|---|---|---|---|
| Help | 困りごとや疑問に答える | 選んでもらう、使い続けてもらう | 商品ページ、サポートページ、商談 | 最初の1本。「初めての観葉植物、よくある3つの質問」 |
| Hub | 続けて見てもらい、関係を保つ | 興味を持ってもらう | YouTubeチャンネル、SNS、メール | 2本目。植物ごとの育て方を月に1本 |
| Hero | 広く知ってもらう | 知ってもらう | 広告枠、SNSの拡散 | 3本目。季節の企画を短い動画で |
初めての1本は、Helpから始めるのが確実です。 検討中の人が抱く疑問は営業やサポートの担当者がすでに知っているため、相手と内容が最初から決まっています。 できた動画は商品ページに置くだけでなく、商談やサポートの返信にも同じものを使えます。 そして、反応が薄くても「どの質問が足りなかったか」という次の改善点が分かります。 Heroの動画は反応が薄いときに、内容が悪かったのか、置き場所が悪かったのか、相手が違ったのかを切り分けにくく、初めての1本には向きません。
例外はあります。 新しい店や新しいサービスで、そもそも名前を知っている人がいない場合は、答える質問がまだ集まっていないので、Heroにあたる短い告知動画から始めます。 この場合の企画の立て方はPR動画の作り方で扱っています。
置き場所を先に一つ決めると、動画の要件が三つ決まります。 長さ(商品ページなら1〜2分でよく、SNSの投稿なら数十秒)、画面の向き(スマホの投稿なら縦、サイトや商談のモニターなら横)、そして音がなくても伝わる文字の量(投稿やサイネージは無音が前提)です。 有料の広告枠で見せる場合は媒体ごとの形式と指標があるので、動画広告の種類・媒体・効果を参照してください。
計画例:一つの事業で、最初の1本まで決める
ここまでの表を、一つの事業で最後まで使ってみます。 題材は架空で、観葉植物のオンラインショップ「ハコニワ植物店」です。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 事業と相手 | 観葉植物のオンラインショップ。相手は、部屋に初めて観葉植物を置こうとしていて「枯らしそうで不安」な人 |
| 相手の状態と目的 | 比べている(買うかどうか迷っている)。目的は「選んでもらう」 |
| 置き場所 | 商品ページ。同じ動画を購入後の案内メールとSNSの投稿にも使う |
| 最初の1本(Help) | 「初めての観葉植物、よくある3つの質問」。水やりの頻度、置き場所、葉が黄色くなったときの対処に、写真と文字で答える。1分弱 |
| 続ける2本(題材だけ) | Hub:植物ごとの育て方を月に1本。Hero:季節の企画を短い動画で |
| 見る数字(一つ) | 商品ページで動画を再生した人の購入率 |
| 作り方 | 手元の写真と文章から作る(撮影なし) |
記入は上から順に進めます。 相手を「枯らしそうで不安な人」まで絞ると、状態は「比べている」に決まり、目的は「選んでもらう」に決まります。 目的が決まれば、置き場所は商品ページで、動画はその不安に答えるものになります。 「よくある3つの質問」に絞ったのは、購入前の問い合わせで多い質問が水やり、置き場所、葉の変色の三つだと想定しているからです。 ここに「当店の品ぞろえ」や「送料無料」を足したくなりますが、相手の不安に答える動画に宣伝を混ぜると、答えを探している人が途中で離れます。
続ける2本は、題材だけ決めて作りません。 最初の1本を商品ページに置いて購入率を見てから、Hubで扱う植物を決めたほうが、反応のあった質問に沿った内容にできるからです。
この計画表の「最初の1本」から、NoLangで作った完成動画がこちらです。
縦型9:16で約53秒、ナレーションと画面の文字で進みます。
初めての観葉植物、よくある3つの質問|ハコニワ植物店
添付した観葉植物の写真7枚で、初めて買う人からよく聞かれる3つの質問(水やりの頻度、置き場所、葉が黄色くなったとき)に順に答える縦型の動画にしてください。質問を画面に大きく出してから答えを示し、最後は「ハコニワ植物店」と「困ったときは、商品ページのQ&Aへ」で締めてください。
計画表の項目は、動画の各場面に次のように反映されています。 冒頭で窓辺の植物の写真の上に「初めての観葉植物、よくある3つの質問」と題を出し、質問ごとに、質問を大きく出した場面と、写真の上に答えを置いた場面が続きます(水やりの手元と乾いた土、レース越しの棚、黄色くなった葉と新芽)。 最後の場面は店の名前と「困ったときは、商品ページのQ&Aへ」で、見た人が次に困ったときの行き先を示しています。 画面の文字だけで質問と答えが追えるので、音を出さずに商品ページを見ている人にも伝わります。
上の「このテンプレートで作る」を押すと、この構成が参照動画として選ばれた状態でNoLangが開きます。 自社の商品の写真を添付し、購入前によく聞かれる質問と答えを指示文に入れると、同じ構成で自社の動画を作れます。 場面ごとの文字と写真を先に書き出しておきたい場合は、動画の構成案テンプレートの書式が使えます。
効果の見方:動画1本につき数字を一つ、悪ければ直す場所を分ける
公開したら再生回数を見ればよい、と考えがちです。 ただ、「選んでもらう」ことを目的とする動画は、再生回数が伸びても購入が増えなければ役目を果たしていません。 逆に、再生回数が少なくても、見た人の多くが購入していれば、その動画は機能しています。 見る数字は、目的ごとに一つに決めます。
| 目的 | 見る数字(一つ) | 数字が取れる場所 | 数字が悪いとき、先に直す場所 |
|---|---|---|---|
| 知ってもらう | 再生数(または指名検索の増減) | 広告やSNSの管理画面、検索の管理ツール | 見られる前:タイトル、サムネイル、置き場所 |
| 興味を持ってもらう | 平均再生時間 | YouTubeやサイトの動画の分析画面 | 見始めた後:冒頭の数秒、場面の順番、長さ |
| 選んでもらう | 動画を見た人の申込率 | 商品ページの計測(動画の再生と申込を分けて記録する) | 見始めた後:答えている質問が相手の疑問と合っているか |
| 使い続けてもらう | サポートへの問い合わせ数の増減 | 問い合わせの記録 | 見始めた後:説明の抜けている手順 |
「先に直す場所」を二つに分けているのは、数字が悪い理由が動画の外にあるか中にあるかで、やることが違うからです。 再生数が伸びない動画は、まだ見られていないので、中身を直しても変わりません。 タイトルとサムネイルと置き場所を先に直します。 再生されるのに途中で離れる動画は、中身に理由があるので、冒頭と場面の順番を直します。
動画1本の数字だけで施策全体の成否を判断して、取り組みをやめてしまわないほうがよい理由も、計画表に戻ると分かります。 計画例のハコニワ植物店では、最初の1本の購入率を見てから、2本目で扱う植物を決める予定にしていました。 1本目の数字は、施策の成否ではなく、2本目の内容を決める材料です。 有料の広告枠で配信した動画は、再生単価など広告固有の指標があるので、動画広告の種類・媒体・効果を参照してください。
作り方を選ぶ:続ける本数と撮影の要否で決める
内製するか外注するかは、3つの基準で判断します。 続ける本数(月に何本も作るなら内製、年に一本の会社紹介なら外注でもよい)、撮影の要否(人物が語る動画や実際の場面が必要なら、撮影と編集を外注する選択肢がある)、確認と承認の多さ(経営層や取引先の確認が多い動画は、第三者の目が入る外注が向く)です。 計画表があれば、外注先から返ってきた提案が、決めた相手と目的に沿っているかを照らし合わせて確認できます。 費用の目安は動画制作の費用相場で扱っています。
手元の写真や資料と文章から作る場合は、NoLangで次の順に進めます。
参照動画を選んで始める
上の計画例の「このテンプレートで作る」を押すと、その動画が「参照動画」として入力欄の上に表示された状態でホームが開きます。 この状態で進めると、参照動画の構成と見た目を引き継いで、自分の内容に合わせた動画を作れます。

質問と答えを入れて、写真を添付する
入力欄に、よく聞かれる質問と答えを含む指示文を入れます。 場面ごとに文を書いてある場合は、入力欄の下の「台本から」を押し、その台本をそのまま貼り付けます。 写真は入力欄の「+」(追加設定・添付)から「ファイルをアップロード」で添付し、どの写真をどの質問に使うかを指示文に書きます。 画面の向きは入力欄の「横型」を押して、縦型(9:16)などを選びます。
生成して、直す
生成後に「編集する」で編集画面を開きます。 画面上の文字や画像は、右端のタイムラインの「テキスト」「画像・動画」から差し替えます。 ナレーションを入れた場合は、右側の「読み上げ台本」で場面ごとの文を直します。 質問が画面に大きく出ているか、答えが写真と合っているかを確認します。

確定して、置く
直し終えたら「この内容で確定する」を押して動画を仕上げ、計画表で決めた置き場所(商品ページなど)に掲載します。
PR動画やプロモーション動画のように、相手と一言を決めるところから企画する手順はPR動画の作り方で扱っています。
まとめ
会議で「動画をやろう」と決まったとき、参加者の頭にある動画がばらばらなのは、動画マーケティングという言葉が置き場所も相手も決めないからです。 決めるのは、見る人の状態です。 まだ知らないのか、興味があるのか、比べているのか、使っているのかを一つ選ぶと、目的が決まり、置き場所と見る数字が決まり、最初の1本が何であるべきかが決まります。 計画例のハコニワ植物店では、「比べている人」から始めて、よくある3つの質問に答える約53秒の動画を、写真と文章から撮影せずに作りました。 自分の事業でも、計画表の一番上の欄を埋めるところから始めてください。