「動画を作りたいので、ヒアリングシートを埋めてください」と言われて、欄の名前は分かるのに手が止まることがあります。 目的、ターゲット、予算、納期。 どれも書けそうですが、書いた内容がその先の何を決めるのかが見えないと、どこまで書けばいいのか判断できません。
この記事では、制作前に自分たちが答えるヒアリングシートの書式(15の項目と質問例)と、その回答をもとに関係者と合意するための企画書の書式を、同じ架空の題材で記入した見本と一緒に紹介します。 記入でよくある抜けと手戻り、企画書の作り方と社内で通すポイント、動画の種類ごとの企画の例、制作会社とのヒアリング(打ち合わせ)の進め方も説明します。 記入した回答が企画書のどの判断に変わったかを対応表にし、その企画書の方針からNoLangで作った完成動画も掲載します。 外注して見積を取る場合に、納品する版の数や修正の範囲といった見積の条件を、各社にそろえて渡す方法も扱います。 書式だけ見たい場合は「ヒアリングシートの書式:15項目と質問例、各欄で決まること」へ進んでください。
動画制作のヒアリングシートとは:企画書・オリエンシート・RFPとの違い
動画制作のヒアリングシートとは、動画の目的、見る人、見る場面、使える素材、日程、予算といった制作の前提を、問いに答える形で書き出す書類です。 この記事では、動画を依頼する側や社内で作る側が、制作の前に自分たちで答えるための書式として扱います。
ヒアリングシートの周りには、企画書をはじめ、似た名前の文書がいくつかあります。 呼び方は会社や業界によって違い、ヒアリングシートを「映像制作のヒアリングシート」と呼ぶ会社もあれば、依頼する側が条件をまとめて渡す文書を「オリエンシート」と呼ぶ会社もあります(オリエンシートとの関係は、この節の後半で説明します)。 名前ではなく、誰が何を決めるための文書かで分けると、4つに整理できます。
| 文書 | 決めること | 書く人 | この記事で扱うか |
|---|---|---|---|
| ヒアリングシート | 目的、視聴者、利用場面、素材、確認の相手といった前提を、問いに答える形で整理する | 依頼する側(制作会社から渡されることもある) | 中心 |
| 企画書 | ヒアリングの回答をもとに、動画の方針と進め方を1枚にまとめて関係者と合意する | 依頼する側 | 中心 |
| 構成案 | 場面ごとに、何を見せて何を言うかを表にする | 作る側(内製なら自分たち、外注なら制作会社) | 扱わない |
| RFP(提案依頼書) | 複数の制作会社に同じ条件で提案と見積を求める | 依頼する側 | 企画書で代える方法を扱う |
ヒアリングシートは、制作会社が用意して依頼側に記入してもらう形が一般的です。 ただ、渡された欄をその場で埋めようとすると、社内で決まっていないことばかりが目につきます。 先に自分たちの書式で答えを整理しておけば、制作会社のシートにどんな欄が並んでいても、その回答から埋められます。 外注しない場合も同じで、内製するときこそ、誰も聞いてくれない前提を自分たちで書き出しておく必要があります。 制作会社との打ち合わせそのものの進め方は、後の「制作会社とのヒアリング(打ち合わせ)」で扱います。
企画書は、その回答を並べ替えて判断を足したものです。 外注なら制作会社に渡す文書になり、内製ならそのまま制作の指針になります。 複数社に見積を取る場合は、この企画書に提案と見積の提出期限を添えれば、RFPの代わりとして渡せます。 場面ごとの表(構成案)は企画書が固まってから作るもので、書き方は動画の構成案テンプレートで扱っています。
オリエンシート・ブリーフィングシートとの関係:依頼する側が渡す書類
依頼する側が、制作会社に動画の目的や条件を伝えるために渡す書類は、オリエンシートやブリーフと呼ばれることもあります。 どちらも広告の仕事で使われてきた言葉です。 オリエン(オリエンテーション)は、依頼する側が制作会社や広告会社に、背景、目的、ターゲット、予算、日程などを説明する場を指し、その内容を文書にしたものがオリエンシートです。 依頼の要旨を説明することはブリーフィングとも呼ばれ、目的やターゲット、伝える特徴といった要点を短くまとめた書類は、ブリーフ(クリエイティブブリーフ)と呼ばれます。 書く項目は会社によって違い、オリエンシートをRFPと同じ意味で使うこともあります。
ヒアリングシートとの違いは、誰が問いを立てるかです。 ヒアリングシートが用意された問いに答える形式なのに対し、オリエンシートやブリーフは、依頼する側が自分から条件を書いて渡す形式です。 書く中身は、目的、視聴者、伝えること、予算、日程と、ほとんど重なります。
そのため、この記事の書式は、依頼する側が渡すオリエンシートとしても使えます。 企画書を依頼の本文にし、ヒアリングシートの回答を添えて、打ち合わせの前に送ります。 「ブリーフィングシート」や「ブリーフ」の名前で書類を求められたときは、要点にあたる欄(目的と成功の判断、視聴者と視聴場面、一番伝えること、動画の方針)を企画書から写せば用意できます。
ヒアリングシートの書式:15項目と質問例、各欄で決まること
ヒアリングシートの欄は、「目的」「ターゲット」と項目名で並べるより、その回答が何を決めるかで分けると答えやすくなります。 ここでは15の欄を、回答で決まることが近い5つの群に分けています。 表計算ソフトでも文書ファイルでも、この順に欄を並べれば同じ書式として使えます。
15項目の一覧:質問例と、最初に埋める欄
まず15の欄を一覧にします。 「質問例」は、自分で答えるときや、社内の関係者に聞くときの問いの形です。 欄は上から順に答えますが、最初に埋めておくのは「答え方」が「曖昧でも書く」の5欄(1・4・5・6・11)です。 この5欄は、ほかの欄の答えの土台になるので、曖昧でも答えを書いてから先へ進みます。
| No. | 欄 | 質問例 | 答え方 |
|---|---|---|---|
| 1 | 見た人にしてほしい行動 | 動画を見終わった人に、何をしてほしいですか? | 曖昧でも書く |
| 2 | いま、それが起きていない理由 | その行動がいま起きていないのは、誰に何が伝わっていないからですか? | 書く |
| 3 | 成功と判断する数値と時期 | 何がどれだけ増えたら、いつの時点で成功と判断しますか? | 未定でよい |
| 4 | 視聴者を一人挙げると誰か | 見る人を一人挙げると、どんな立場で、何に困っている人ですか? | 曖昧でも書く |
| 5 | どこで、どんな状態で見るか | どこで、どの画面で見ますか? 音は聞こえますか? 何秒で見るかどうかを決めますか? | 曖昧でも書く |
| 6 | 一番伝えること | 見た人に一つだけ覚えてもらうなら、何ですか? | 曖昧でも書く |
| 7 | 必ず入れるもの/入れられたら入れるもの | 外せない内容と、余裕があれば入れたい内容は何ですか? | 書く(後半は未定でよい) |
| 8 | 手元にある素材と、これから用意するもの | 使える画面、写真、資料、過去の動画は何ですか? これから撮る・作るものはありますか? | 書く |
| 9 | 参考にしたい動画と、その理由。避けたい表現 | 近づけたい動画と、そのどこが参考かを挙げられますか? 避けたい表現はありますか? | 未定でよい |
| 10 | 使い始める日と、動かせない日程 | いつから使いますか? 動かせない日程はありますか? | 書く |
| 11 | 確認する人と、最終的に決める人 | 途中で見る人は誰で、最後にOKを出すのは誰ですか? | 曖昧でも書く |
| 12 | 確認の回数と、直してもらう範囲 | 何回見て、そのたびにどこまで直してもらいますか? | 外注なら見積の前に書く |
| 13 | 使う場所ごとの違い | ほかに使う場所はありますか? そこでは画面の縦横、音、長さ、結びが同じですか? | 外注なら見積の前に書く |
| 14 | 字幕と音声 | 字幕とナレーションは入れますか? 誰が読みますか? 音なしでも筋が追える必要がありますか? | 外注なら見積の前に書く |
| 15 | 予算の上限と、その金額に含めるもの | 外注しますか、内製しますか? 予算の上限と、その金額に含めるものは何ですか? | 未定でよい |
「未定でよい」欄も、未定と書くときは、誰がいつまでに決めるかを添えます。 各欄に何を書き、その回答で何が決まるかを、次の5つの群で説明します。 答える順番と、記入でよくある抜けは、次の節の「ヒアリングシートの書き方のコツ」で扱います。
A. 目的と成果
| No. | 欄 | 書くこと | この回答で決まること |
|---|---|---|---|
| 1 | 見た人にしてほしい行動 | 動画を見終わった人に取ってほしい行動を一つ | 動画の結び(案内)と、成功の判断 |
| 2 | いま、それが起きていない理由 | 誰に、何が伝わっていないか | 一番伝えることの候補 |
| 3 | 成功と判断する数値と時期 | 目安でよい。決まっていなければ「未定」 | 公開後に何を見るか |
1は「認知を広げたい」のような状態ではなく、「ブースで声をかける」「申請フォームを開く」のような行動で書きます。 行動で書くと、動画の最後に何を案内すればいいかがそのまま決まります。 2は1の裏返しで、その行動がいま起きていない理由を書きます。 ここに書いた理由が、6の「一番伝えること」の候補になります。 3は数値が出せなければ未定でかまいません。 数値より先に、何を見て成功と判断するか(名刺の枚数、申請の件数など)だけ決めておきます。
B. 視聴者と場面
| No. | 欄 | 書くこと | この回答で決まること |
|---|---|---|---|
| 4 | 視聴者を一人挙げると誰か | 役職、経験、そのとき困っていること | 言葉の選び方、前提の説明量 |
| 5 | どこで、どんな状態で見るか | 媒体、音を出せるか、端末、集中して見られる時間 | 尺、縦横、文字の量、冒頭の作り |
4は「30代の会社員」のような属性ではなく、一人の像で書きます。 その人が動画を見る前に何を知っていて、何に困っているかが分かると、説明をどこから始めるかが決まります。 5は、この書式の中で動画の見た目を最も大きく変える欄です。 音が聞こえない場所で見るなら文字が主役になり、歩きながら数秒で見るかどうかを決めるなら冒頭で内容が分かる作りになり、スマホで縦に見るなら画面の向きから変わります。
C. 伝える内容と素材
| No. | 欄 | 書くこと | この回答で決まること |
|---|---|---|---|
| 6 | 一番伝えること | 一文で。二つ以上あるなら別の動画にする | 構成の中心 |
| 7 | 必ず入れるもの/入れられたら入れるもの | 要素を二つに分けて書く | 場面の取捨選択 |
| 8 | 手元にある素材と、これから用意するもの | 画面、写真、資料、過去の動画。撮影や作成が必要なものは分ける | 表現方法(実写、画面、アニメーション)と、かかる手間 |
| 9 | 参考にしたい動画と、その理由。避けたい表現 | URLと「どこが参考か」。避けたい表現があればそれも | 見た目とテンポの共有 |
6は、2に書いた「伝わっていないこと」を、視聴者に伝わる一文に直したものです。 7は、伝えたい要素を全部並べたうえで、外せないものと余裕があれば入れるものに分けます。 分けておくと、尺に収まらないときに何を削るかを、その場で議論せずに済みます。 8は、手元にあるものと、これから撮る・作るものを分けて書きます。 撮影素材がないなら画面と文字で作る方針になり、撮影が必要ならその日程と費用が制作全体に加わります。 9の参考動画は、URLだけでなく「テンポが近い」「文字の出し方が好み」のように、どこを参考にするかを添えます。 見つからなければ「避けたい表現」だけでも書いておけば、制作側からの最初の提案が的外れになるのを防げます。
D. 進め方と確認
| No. | 欄 | 書くこと | この回答で決まること |
|---|---|---|---|
| 10 | 使い始める日と、動かせない日程 | 展示会、発売日、研修日など | 逆算した制作日程と、確認に使える回数 |
| 11 | 確認する人と、最終的に決める人 | 途中で見る人と、最後にOKを出す人 | 確認の段取り(どの段階で誰に見せるか) |
| 12 | 確認の回数と、直してもらう範囲 | 何回見るか。直す範囲を文言や図の差し替えまでにするか、場面の組み替えまで含めるか | 見積に含める修正と、追加になる変更の境目 |
11は、書き忘れると後で最も高くつく欄です。 途中の確認を担当者だけで進め、完成直前に上長が初めて見て構成から直す、という流れは動画制作でよく起きます。 最終的に決める人には、構成案の段階で一度見てもらう段取りを、この欄を根拠に組んでおきます。
12は、11で組んだ段取りを回数に直した欄です。 構成案、完成前、最終確認で1回ずつ見るなら、確認は3回です。 確認のたびに直しを頼むなら、直しも3回になります。 直してもらう範囲は、文言や図の差し替えのような部分の直しと、場面の順番や数を変える組み替えに分けて書きます。 組み替えは構成案の確認までに済ませると決めておけば、その後の確認は部分の直しで終わります。 外注では、見積に含まれる修正の回数、それを超えたときの扱い、構成案の段階の直しを修正に数えるかどうかが、会社によって違うことがあります。 確認ごとに何を直してもらうかまで書いて渡せば、どの会社からも同じ条件で見積を取れます。
E. 納品物と予算
| No. | 欄 | 書くこと | この回答で決まること |
|---|---|---|---|
| 13 | 使う場所ごとの違い | 5の場所のほかに使う予定があれば挙げ、場所ごとに画面の縦横、音、長さ、結び(してほしい行動)が同じかを書く | 納品する版の数と、版ごとの違い |
| 14 | 字幕と音声 | 字幕を入れるか(言語も)、ナレーションを入れるか、誰が読むか。音なしでも筋が追える必要があるか | 字幕とナレーションの作業と、版を分けるか |
| 15 | 予算の上限と、その金額に含めるもの | 外注か内製か。上限か幅と、12〜14のどこまでを含める前提か。決まっていなければ、誰がいつ決めるか | 提案の範囲と、見積を比べるときの条件 |
この群の回答で、見積の対象、つまり何を何本、どこまで作るかが決まります。 外注するときに欠かせない欄ですが、内製でも13と14で、作る本数と作業が決まります。
13は、5で答えた場所のほかに、使う予定がある場所を挙げる欄です。 展示会の後にWebサイトに置く、SNSにも投稿する、といった予定があれば、場所ごとに画面の縦横、音、長さ、結びが同じかを確かめます。 違いによっては、その場所用の版が別に必要になります。 結びだけが違うなら、本編はそのままで結びの場面を替えた版になり、縦横が違えば、画面の組み方から作り直す版になります。 音の条件が違っても、音なしで筋が追える作りにしておけば、音を出して見る場所でも同じ版を使えます。 版は見積の単位になるので、後から足すと追加の依頼になります。 使う期間が決まっていれば、それも添えます。 出演者や音楽を使う場合、使える場所や期間に条件が付くことがあるためです。 ファイルの形式や画質に指定がなければ、使う場所を書くだけで、制作側がそれに合わせて提案できます。
14は、5で「音が聞こえない」と答えた場所があるかどうかで中身が変わります。 音なしで見る場所があるなら、字幕は飾りではなく、欠かせない仕様です。 ナレーションを入れるなら、社員が読むか、ナレーターに頼むか、合成音声にするかも書きます。 読む人によって、費用と日程が変わるためです。 外国語の字幕や、音声を差し替えた版が要るなら、それも13の版として数えます。
15は、まず外注か内製かを書きます。 外注なら、予算を上限か幅(「○万円まで」「○〜○万円」など)で書き、その金額に12〜14のどこまでを含めるかを添えます。 同じ予算でも、版が1つか2つか、字幕を含むか、確認が何回かで、制作会社が出せる提案は変わります。 外注か内製かをまだ比べている場合や、金額が決まっていない場合は「未定」と書き、誰がいつまでに決めるかを添えます。 上限や幅の目安にする相場は、動画制作の費用相場にまとめています。
ヒアリングシートの書き方のコツ:答える順番と、手戻りを生む抜け
書き方のコツは2つあります。 上から順に答えて、決まっていない欄も空けずに書くことと、書き終えた回答に、後の工程で手戻りを生む書き方がないかを見直すことです。
答える順番と、未定でよい欄
欄は上から順に答えます。 1の行動が決まらないと4の視聴者が絞れず、4と5が決まらないと尺や文字の量(企画書の「動画の方針」)が決められないためです。 同じように、版の数は5と13の場所から、予算に含めるものは12〜14から決まるので、15は最後に書きます。 逆に、9の参考動画から考え始めると、見た目の好みが先に固まり、目的に合わない表現に、後から理由をつけることになります。
「未定」で済ませず、曖昧でも答えを書くのは1・4・5・6・11の5つです。 外注で見積を取るなら、見積の条件になる12〜14も同じように書きます。 3・7の後半・9・15は「未定」「相談したい」と書いてかまいません。 ただし未定と書いた欄には、誰がいつまでに決めるかを添えます。 「予算の上限:未定。部長が、見積がそろった時点で決める」のように書いておけば、未定のまま依頼しても、誰が何をいつ決めるかが関係者の間で共有されます。 未定と書いた欄は、企画書に相談事項として書き添えておけば、外注先との打ち合わせでも社内の確認でも、その欄の内容を決める時間に充てられます。
よくある抜けと、後で起きる手戻り
欄が埋まっていても、書き方によっては、構成案や完成前の確認になってから前提が変わり、作り直しや追加の依頼になります。 書き終えたら、次の表で回答を見直します。
| よくある書き方 | 後で起きる手戻り | 書き直し方 |
|---|---|---|
| 1に、してほしい行動を二つ以上書く | 結びと構成の中心が決まらず、構成案の確認で場面を組み替える | 行動を一つに絞り、残りは別の動画か別の版にする |
| 4を「30代の会社員」のような属性で書く | 説明をどこから始めるかで意見が割れ、確認のたびに言い回しを直す | 一人の像にして、その人が知っていることと困っていることを書く |
| 5に場所だけを書き、音と画面の向きを書かない | 音なしで流すと後で分かって字幕を足す。縦の画面だと分かって組み直す | 音が聞こえるか、どの画面で見るかまで書く |
| 8に、素材の出どころと使える範囲を書かない | 写真や音楽、過去の動画が使えないと完成間近に分かり、差し替える | 素材ごとに、誰が作ったものか、どこまで使えるかを書く |
| 9に、参考動画のURLだけを書く | 制作側が別の点を参考にして、見た目の方向がずれる | どこを参考にするか(テンポ、文字の出し方など)を添える |
| 11に、途中で見る人しか書かない | 完成直前に最終的に決める人が初めて見て、構成から直す | 最後にOKを出す人を書き、構成案の段階で見てもらう |
| 12を空けるか、「適宜」と書く | 見積に含まれる修正の回数を超え、追加の費用や日程の延長になる | 確認の回数と、そのたびに直してもらう範囲を書く |
| 13に、後で使う場所を書かない | 縦の版や結びの違う版が後から要ると分かり、追加の依頼になる | 予定があれば、見積の前に場所と違いを挙げる |
表の手戻りは、どれも、確認や納品の段階で初めて前提が分かることから起きます。 同じ前提でも、ヒアリングシートの段階で書いておけば、直すのは回答の文だけで済みます。
動画の種類ごとに重みが変わる欄:採用・サービス紹介・社内研修など
この書式は、動画の種類が変わっても同じ15欄のまま使えます。 変わるのは、どの欄を厚く書くかです。 種類ごとに欄を足すより、重くなる欄を具体的に書くほうが、回答と企画書の欄の対応が崩れません。
| 動画の種類 | 重くなる欄 | その欄に書くこと |
|---|---|---|
| 採用動画 | 4・8・13 | 4に、新卒か中途か、どの職種か、応募の前に何を知りたい人か。8に、出演する社員と、撮影の場所と日程。13に、説明会、採用サイト、SNSなど使う場所ごとの違いと、出演した社員が退職した後も使い続けるか |
| サービス・商品紹介の動画 | 1・6・13 | 1に、問い合わせ、資料請求、購入のうち、してほしい行動を一つ。6に、ほかの選択肢と比べたときの違いを一文。13に、サイト、商談、展示会など場所ごとの結び |
| 社内研修・マニュアルの動画 | 3・5・11 | 3に、見た後にできるようになったかを何で確かめるか(確認テスト、問い合わせの件数など)と、いつ確かめるか。5に、研修室で流すか、各自の画面で好きなときに見るか。11に、内容の正しさを確かめる部署と担当者 |
| SNS・広告の動画 | 3・5・13 | 3に、見る数値(再生数、クリック数など)と時期。5に、縦の画面で見るか、音を出して見るか、最初の数秒で見続けるかを決める状態か。13に、投稿先ごとの縦横と長さ |
| 展示会・イベントの動画 | 5・10・13 | 5に、会場の音と、歩きながら見るかどうか。10に、会期と、その前の最終確認の日。13に、会期の後の使い道(後の記入例がこの種類) |
表に挙げたのは、その種類で答えが曖昧なままだと、後の工程で手戻りになりやすい欄です。 一覧で「未定でよい」とした欄(3など)も、表に挙がっている種類では、未定にせず書きます。 採用動画では、出演する社員が決まらないと撮影の日程が組めず、SNSや広告の動画では、投稿先が一つ増えるたびに縦横や長さの違う版が増えることがあります。 社内研修やマニュアルの動画は、手順や数値の誤りがそのまま業務の誤りにつながるので、内容を確かめる人を最初に決めておきます。
種類ごとの動画の作り方は、採用動画の作り方、サービス紹介動画の作り方、研修動画の作り方、動画広告の媒体と効果の測り方で扱っています。
企画書の書式:書く要素を1枚に収める10欄
企画書は次の10欄で作ります。 右の列に、どのヒアリング欄から書くかを示しました。
| 欄 | 書くこと | 元になるヒアリング欄 |
|---|---|---|
| 企画名 | 用途と対象が分かる名前 | 5・10 |
| 目的と成功の判断 | してほしい行動、いま起きていない理由、見る数値 | 1・2・3 |
| 視聴者と視聴場面 | 一人の像と、見る場所と状態 | 4・5 |
| 一番伝えること | 一文 | 6 |
| 動画の方針 | 尺、縦横、文字と音の扱い、表現方法、冒頭の作り | 5・7・8・9 |
| 納品する版 | 版ごとの使う場所、尺、縦横、字幕と音声、結び | 13・14 |
| 使う素材と用意するもの | 手元にあるもの、撮る・作るもの | 8 |
| 進め方と確認 | 日程、途中確認の段階と相手、最終的に決める人、確認の回数と直してもらう範囲 | 10・11・12 |
| 費用の前提 | 内製か外注か。外注なら予算の上限か幅と、その金額に含めるもの。未定なら誰がいつ決めるか | 15 |
| 構成の要点 | 場面の役割の並び(導入→課題→解決→案内 など) | 6・7 |
10欄のうち8欄はヒアリングの回答をほぼそのまま写す欄で、自分たちの判断を書くのは「動画の方針」と「納品する版」の2欄です。 「動画の方針」は、5の視聴場面から尺と文字の扱いを、8の素材から表現方法を、9の参考動画から見た目を決めて、一つの欄にまとめます。 「納品する版」は、13で挙げた場所ごとに、同じ完成物で足りるか、別の版が要るかを判断して書きます。 内製ならこの2欄が制作の指針になり、外注なら見積の対象になります。 制作会社から返ってくる構成案と見積も、この2欄に照らして確認します。
「構成の要点」は、場面の役割を並べるところにとどめます。 各場面で何を見せて何を言うかは、企画書が通ってから構成案の場面表で書きます。
企画書の作り方:ヒアリングの回答から、社内で確かめて渡すまでの5ステップ
企画書は、白紙から書き始めるより、ヒアリングシートの回答を並べ替えるところから始めると、初めてでも欄が埋まります。 手順は次の5つです。
ステップ1:ヒアリングシートの15欄に答える
15の欄に上から順に答えます。 最初に埋める5つの欄(1・4・5・6・11)は、曖昧でも答えを書き、未定のまま先へ進みません。 そのほかの決まっていない欄は「未定」と書き、誰がいつまでに決めるかを添えます。 この段階では、企画書の形を気にする必要はありません。
ステップ2:回答を企画書の10欄に写す
上の表の右の列にあるヒアリング欄から、回答を写します。 たとえば「目的と成功の判断」には1・2・3の回答を、「視聴者と視聴場面」には4・5の回答を、それぞれ一、二文にまとめます。
ステップ3:「動画の方針」と「納品する版」に判断を書く
自分たちの判断を書くのは、この2欄です。 書き方は上の表の下で説明したとおりです。 後の記入例で言えば、全編に字幕を入れると決めたのは5の「音声が聞こえない」という回答からで、結びだけを替えたWeb版を足すと決めたのは13の「展示会の後はサイトにも置き、結びは資料請求にしたい」という回答からです。 ヒアリングの回答だけでは決めきれない点は、ここで無理に決めず、次のステップで相談事項にします。
ステップ4:相談事項を書き添え、最終的に決める人に確かめる
未定と書いた欄と、ヒアリングの回答だけでは決めきれなかった点を、相談事項として企画書に書き添えます。 数が少なければ、該当する欄の中に「未定。誰がいつまでに決めるか」を書けば足ります(後の記入例はこの形です)。 多ければ、10欄の後に「相談事項」の欄を足してまとめます。 そのうえで、11に書いた最終的に決める人に、企画書を見てもらいます。 決める人が企画書で確かめることと、通りやすくする書き方は、後の「企画書を社内で通すポイント」で説明します。 ここで方針が変わったら、元になったヒアリングの回答から直します。 構成案や完成前の動画を見てから方針を直すより、1枚の企画書で直すほうが、手戻りが少なく済みます。
ステップ5:制作会社に渡す(内製なら制作の指針にする)
外注するなら、ステップ4で確かめた企画書を参考動画と一緒に、打ち合わせの前に制作会社へ送ります。 複数の会社に頼むなら、どの会社にも同じ企画書を送ります。 打ち合わせの進め方は「制作会社とのヒアリング(打ち合わせ)」、見積の頼み方と比べ方は「外注する場合」で扱います。 内製するなら、企画書の「構成の要点」から、場面ごとの構成案を作ります。
企画書を社内で通すポイント:決める人が確かめることと、書き方
企画書を最終的に決める人(部長や役員など)は、動画の出来ばえより先に、費用をかけてよいか、このまま進めてよいかを判断します。 判断に要る情報を企画書の決まった欄に書いておけば、決める人は企画書だけで判断でき、作る側は同じ説明を繰り返さずに済みます。
決める人が企画書で確かめること
| 確かめること | 答える欄 | 書いておくこと |
|---|---|---|
| 何のために作るのか | 目的と成功の判断 | してほしい行動、それがいま起きていない理由、公開後に見る数値 |
| 費用と、その金額で手に入るもの | 費用の前提、納品する版 | 上限か幅と、版の数、字幕と音声、確認の回数のどこまでを含むか |
| 使い始める日に間に合うか | 進め方と確認 | 使い始める日と、そこから逆算した確認の日 |
| 使ってよい素材か | 使う素材と用意するもの | 写真、ロゴ、音楽、過去の動画の出どころと使える範囲。出演する人の了承 |
| まだ決まっていないこと | 未定と書いた欄、相談事項 | 決めること、決める人、期限 |
費用は、金額だけでは判断できません。 版が1つか2つか、字幕が入るか、確認が何回かで、同じ金額でも手に入るものが変わるためです。
素材の欄では、決める人は、会社として使ってよいものかを確かめます。 写真や音楽は、手に入れたときの条件で使える場所や期間が決まっていることがあります。 社員が出演するなら、本人の了承と、退職した後も公開を続けるかを決めておきます。 外注した動画では、完成した動画を使える範囲も契約で決めます。 権利の確かめ方は、動画の著作権の「動画制作を依頼したときの著作権」で扱っています。
通りやすくする書き方
- 1枚に収める。 判断に要ることを1枚で見渡せるようにします。10欄が1枚に収まらないときは、「動画の方針」と「納品する版」以外の欄を短くします。
- 判断の横に、元になった回答を添える。 「全編に字幕を入れる(5:会場の音で聞こえない)」のように、欄の番号と回答を添えます。決める人は判断の理由を企画書の中で確かめられ、方針を変えたいときも、どの回答から直せばよいかが分かります。
- 決めきれない点は、案を並べて選んでもらう。 記入例のナレーションのように「ナレーターと合成音声の2通りで見積を取る」と書いておけば、決める人は見積を見比べて選べます。
- 作った後の使い方まで書く。 展示会の後にサイトでも使う、研修の後もマニュアルとして残す、といった予定を「納品する版」に書いておくと、一度の費用でどこまで使えるかが伝わります。
記入例(見本):展示会ブース用の紹介動画で、回答が方針と見積の条件になるまで
架空の題材で、両方の書式を記入してみます。 自社の回答をどの程度の具体さで書くかを確かめる見本として使えます。 中小企業向けに備品の発注をまとめて請け負うサービス「そろえ便」(架空)が、展示会のブースで流す30秒ほどの紹介動画を作るとします。 展示会の後は、同じ動画をサービスサイトでも使う予定です。 展示会で流す動画そのものの作り方は、展示会動画の作り方で扱っています。
ヒアリングシートの記入例
| No. | 欄 | 回答 |
|---|---|---|
| 1 | 見た人にしてほしい行動 | ブースで担当者に声をかける |
| 2 | いま、それが起きていない理由 | 備品の発注が部署ごとにばらばらで、まとめると安くなることが知られていない |
| 3 | 成功と判断する数値と時期 | ブースでの名刺交換の枚数を、前回の出展と比べる。目標の枚数は未定で、マーケティング担当が前回の実績を見て、構成案の確認までに決める |
| 4 | 視聴者を一人挙げると誰か | 総務担当。備品の発注に月に数時間かけていて、部署からの依頼をまとめる手間に困っている |
| 5 | どこで、どんな状態で見るか | 展示会のブースの横型モニター。会場の音で音声は聞こえない。通路を歩きながら、数秒で見るかどうかを決める |
| 6 | 一番伝えること | 発注先を一つにまとめると、手間と費用が減る |
| 7 | 必ず入れるもの/入れられたら入れるもの | 必ず:課題の提示、ブースで相談できる案内。できれば:導入までの流れ |
| 8 | 手元にある素材と、これから用意するもの | ある:サービス画面のキャプチャ、料金比較の資料、ロゴ。撮影する素材はない |
| 9 | 参考にしたい動画と、その理由。避けたい表現 | 文字と図で課題から解決まで見せる短い紹介動画(テンポと文字の出し方)。避けたい:人物の出演が主になる実写 |
| 10 | 使い始める日と、動かせない日程 | 展示会の初日。その2週間前に最終確認 |
| 11 | 確認する人と、最終的に決める人 | 途中はマーケティング担当。最終は営業部長 |
| 12 | 確認の回数と、直してもらう範囲 | 構成案、完成前、最終確認の計3回で、確認のたびに直しを1回頼む。場面の組み替えは構成案の確認まで、その後に直すのは文言と図まで |
| 13 | 使う場所ごとの違い | 会期中は展示会のブースで流し、展示会の後はサービスサイトの紹介ページにも置く。サイトの動画枠も横長で、音を出すかは見る人による。長さはブースと同じでよい。結びは資料請求の案内にしたい |
| 14 | 字幕と音声 | 日本語の全編字幕。ナレーションも入れるが、音なしでも字幕だけで筋が追えるようにする。読む人は未定で、ナレーターと合成音声の2通りで見積を取り、営業部長が見積を見て決める |
| 15 | 予算の上限と、その金額に含めるもの | 外注か内製かも、予算の上限も未定。見積がそろった時点で、営業部長が比べて決める。見積は12〜14の内容をすべて含めて取る |
企画書の記入例
| 欄 | 記入内容 |
|---|---|
| 企画名 | 展示会ブース用 そろえ便 紹介動画(30秒) |
| 目的と成功の判断 | ブースで担当者に声をかけてもらう。発注をまとめると安くなることが知られていないので、それを伝える。名刺交換の枚数を前回出展と比べる(目標の枚数は、構成案の確認までにマーケティング担当が決める) |
| 視聴者と視聴場面 | 備品の発注に月に数時間かけている総務担当。ブースの横型モニターを、通路を歩きながら音なしで数秒見る |
| 一番伝えること | 発注先を一つにまとめると、手間と費用が減る |
| 動画の方針 | 横型16:9、30秒前後。音が聞こえないので全編に字幕を入れて読める文字量にし、ナレーションは補助。歩きながら見るので、冒頭3秒で課題を文字で出す。撮影素材がないので、サービス画面の図と文字を中心にした表現。参考動画のテンポと文字の出し方に合わせる |
| 納品する版 | ブース版:会期中に展示会のブースで流す。横型16:9、30秒前後、日本語の全編字幕とナレーション(読む人は見積を見て決める)、結びはブースでの案内。Web版:展示会の後にサービスサイトの紹介ページに置く。本編はブース版と同じで、結びだけを資料請求の案内に替える。納品はブース版と同時 |
| 使う素材と用意するもの | ある:サービス画面のキャプチャ、料金比較の資料、ロゴ。用意する:画面を説明用に簡略化した図 |
| 進め方と確認 | 展示会初日の2週間前に最終確認。構成案の段階で営業部長に一度見てもらい、完成前の確認はマーケティング担当、最終確認は営業部長。確認は計3回で、そのたびに直しを1回頼む。構成案の後に直すのは文言と図まで |
| 費用の前提 | 外注と内製を比べて決める。外注の見積は、2つの版、全編字幕とナレーション、確認3回とそのたびの直しを含めて、同じ文面で複数社から取る。ナレーションはナレーターと合成音声の2通りで見積もってもらう。上限は、見積がそろった時点で営業部長が決める |
| 構成の要点 | 導入と課題→課題の具体→解決→仕組み→導入までの流れ→ブースでの案内 |
回答が判断に変わった箇所
企画書に書いた判断を、元になったヒアリングの回答と並べます。
| ヒアリングの回答 | 企画書の判断 |
|---|---|
| 音声が聞こえない(5) | 全編に字幕を入れて読める文字量にする。ナレーションは音が出せる場合の補助 |
| 通路を歩きながら数秒で判断する(5) | 冒頭3秒で課題を文字で出す。30秒前後に収める |
| 横型モニター(5) | 横型16:9 |
| 撮影する素材がない(8) | サービス画面の図と文字を中心にした表現 |
| 実写が主の動画は避けたい(9) | 人物の出演なし |
| 必ず入れる:課題の提示と案内。できれば:導入までの流れ(7) | 構成の要点の先頭を課題、末尾をブースでの案内にし、導入までの流れは案内の直前に短く入れる |
| 最終は営業部長(11) | 構成案の段階で営業部長の確認を入れる |
| 展示会の後はサイトにも置き、結びは資料請求にしたい(13) | 結びだけを替えたWeb版を足し、納品する版は2つ(次の節で確かめる) |
音声が聞こえないという回答が、この動画の見た目を最も大きく左右しています。 音が前提なら、画面の文字は要点だけにしてナレーションで補えますが、音がないなら、ナレーションで伝えるはずだった内容を、読める分量の文字として画面に出すことになります。 文字が増えれば一場面の秒数も伸びるので、30秒に収めるには場面の数を絞る必要があり、そこで7で分けた「必ず入れるもの」が、残す場面の基準になります。
営業部長の確認を構成案の段階に入れたのは、11の回答があったからです。 完成後に初めて見てもらうと、直しは構成からになります。 場面の並びが決まった時点で見てもらえば、直しは文言と図の範囲で済みます。 12で、構成案の確認より後に直す範囲を文言と図までとしたのも、この段取りに合わせたものです。
サイトでも使うなら:同じ完成物で足りるか、別の版か
13では、展示会の後はサービスサイトの紹介ページにも置くと答えています。 ブースとサイトの違いを、画面の縦横、音、長さ、結びの4点で並べ、同じ版で足りるかを判断します。
| 確かめること | 展示会のブース | サービスサイト | 判断 |
|---|---|---|---|
| 画面の縦横 | 横型のモニター | ページ内の横長の動画枠 | 同じでよい |
| 音 | 会場の音で聞こえない | 音を出して見る人も、出さずに見る人もいる | 全編字幕のままでよい |
| 長さ | 歩きながら数秒で見るかを決める。30秒前後 | 紹介ページの文章が説明を補うので、30秒前後で足りる | 同じでよい |
| 結び(してほしい行動) | ブースで担当者に声をかける | 資料請求をする | 違う。結びの場面を替える |
作りを変える必要があるのは、結びだけでした。 実際、後半で紹介する完成動画(ブース版)の最後の場面は「詳しくは、このブースで」です。 このままサイトに置くと、会期が終わった後も、すでにないブースへ案内することになります。 そこで、本編はそのままにして、結びの場面だけを資料請求の案内に替えた版をWeb版として足し、納品する版を2つにしました。 企画書の「納品する版」と「費用の前提」にある2つの版は、この判断から来ています。
もしスマホを縦に持って見るSNSにも投稿するなら、縦横が違うので、文字と図の配置から組み直す版になります。 結びの差し替えより手間のかかる版なので、予定があれば、見積を取る前に13で挙げておきます。
動画の企画とは:企画で決めることと、種類ごとの企画の例
動画の企画とは、誰に、どこで、何を伝えて、見た後にどう動いてもらうかを決め、それを実現する作り(長さ、見せ方、版)まで決めることです。 企画書は、企画で決めたことを1枚に書いて、社内と制作会社が同じ前提で進めるための文書です。 この記事の書式では、ヒアリングシートに答え、その回答から企画書の10欄を埋めるまでが企画にあたります。
展示会ブース用の記入例のほかに、動画の種類ごとの企画の例を3つ挙げます。 どれも架空の題材で、企画書の10欄のうち、その種類で方針の決め手になる欄を中心に埋めています。 埋めていない欄は、展示会の記入例と同じ要領で書きます。
採用動画の企画の例
| 欄 | 記入内容 |
|---|---|
| 企画名 | 中途採用 開発チームの仕事紹介動画(2分) |
| 目的と成功の判断 | 採用サイトを見たエンジニアに、カジュアル面談を申し込んでもらう。申込みが少ないのは、仕事の進め方が社外から見えないため。採用サイトからの面談の申込み数を、公開前の3か月と比べる |
| 視聴者と視聴場面 | ほかの会社で数年働き、転職を考え始めたWebエンジニア。採用サイトを開いてPCで見る。音を出すとは限らない |
| 一番伝えること | 仕様を決める段階から開発者が加わり、チームで話し合って作っている |
| 動画の方針 | 横型16:9、2分前後。開発者2人へのインタビューと、打ち合わせや作業の様子で構成する。全編に字幕を入れ、音なしでも話の要点が追えるようにする |
| 使う素材と用意するもの | 出演する開発者2人と、撮影の1日。出演の了承は、使う場所(採用サイトと会社説明会)と、退職した後も公開を続けるかを伝えて取る |
| 納品する版 | 採用サイト版(2分)。会社説明会でも同じ版を流す。SNS用の縦の短い版は今回は作らず、公開の3か月後に人事部長が要否を決める |
採用動画で重くなる4・8・13の回答が、そのまま方針になっています。 視聴者を転職を考え始めたエンジニアに絞ったことで、伝えることが仕事の進め方に決まりました。 出演する社員が退職した後の扱いは、撮影の前に決めています。 13では、会社説明会でも同じ版を流すと決め、SNS用の縦の版は公開後に要否を決める形にして、納品する版を1つにしています。
社内研修・マニュアル動画の企画の例
| 欄 | 記入内容 |
|---|---|
| 企画名 | 経費精算システムの申請手順動画(1本3分以内、4本) |
| 目的と成功の判断 | 新しい経費精算システムで、社員が自分で申請を終えられるようにする。経理部への問い合わせと差し戻しの件数を、切り替えた翌月に数え、前のシステムのときと比べる |
| 視聴者と視聴場面 | 月に数回だけ経費を申請する営業担当。申請するときに自分のPCで、手順ごとに止めながら見る。音を出せない席もある |
| 一番伝えること | 申請の画面を上から順に埋めれば、申請が終わる |
| 動画の方針 | 実際の申請画面を録画し、操作する箇所を枠で示す。全編に字幕を入れる。1本に1つの手順を入れ、3分以内に収める |
| 進め方と確認 | 画面と手順が正しいかは経理部の担当者が確かめ、最後は経理部長が決める。システムの画面が変わったときに作り直す担当者も決めておく |
社内研修・マニュアルの動画で重くなる3・5・11の回答が決め手です。 申請しながら止めて見る(5)ので、1本に1つの手順に分けました。 手順の誤りがそのまま申請の誤りになるので、内容を確かめる人(11)を経理部に置き、成功の判断(3)は、見た後に自分で申請できたかが分かる件数にしています。
SNS広告の動画の企画の例
| 欄 | 記入内容 |
|---|---|
| 企画名 | オンライン英会話 無料体験の縦型広告動画(15秒) |
| 目的と成功の判断 | 広告を見た人に、無料体験の申込みページを開いてもらう。配信開始から2週間のクリック数と申込み数を、これまでの静止画の広告と比べる |
| 視聴者と視聴場面 | 英語を学び直したい会社員。通勤中にスマホでSNSを流し見していて、音は出さない。最初の数秒で見続けるかを決める |
| 一番伝えること | 1回25分のレッスンを、始業前の時間に受けられる |
| 動画の方針 | 縦型9:16、15秒。最初の画面で「始業前の25分で英会話」を文字で出す。音なしで伝わるよう、内容はすべて文字で見せる |
| 納品する版 | 冒頭の文言だけを変えた2案。同じ期間に配信してクリック数を比べ、多い案を残す |
SNS・広告の動画で重くなる3・5・13の回答が決め手です。 最初の数秒で見続けるかを決める(5)ので、一番伝えることを冒頭の文字に置きました。 見る数値と時期(3)が決まっているので、冒頭の文言だけを変えた2案を作って配信で比べる、という版の作り方(13)にしています。
制作会社とのヒアリング(打ち合わせ):流れの中の位置と進め方
外注するとき、ヒアリングシートと企画書がいちばん役に立つのは、制作会社との最初の打ち合わせです。 制作会社は、この打ち合わせ(ヒアリング)で聞いた内容をもとに、提案と見積を作ります。
依頼から納品までの流れの中での、ヒアリングの位置
制作会社に依頼する場合、ヒアリングは制作が始まる前、提案と見積を受け取る前に行われます。
- 社内で前提を決める(ヒアリングシートに答え、企画書にまとめる)
- 制作会社に相談し、ヒアリング(打ち合わせ)を受ける
- 提案と見積を受け取り、比べる
- 依頼先を決めて、発注・契約する
- 企画・構成から納品までの制作が始まる
ヒアリングで伝わらなかった条件は、提案にも見積にも入りません。 制作会社によっては、ヒアリングの後に、動画の構成や見せ方の案をまとめた企画案を示すこともあります。 そのときは、自分たちの企画書の「動画の方針」と「納品する版」に照らして確かめます。 制作の工程ごとの分担と期間は、動画制作の流れで扱っています。
打ち合わせで聞かれることと、答える欄
打ち合わせで制作会社が聞くことは会社ごとに違いますが、多くの場合、次のことを聞かれます。 ヒアリングシートに答えてあれば、どれもいずれかの欄で答えられます。
| 聞かれること | 答えるヒアリング欄 |
|---|---|
| 動画を作る目的と、いま困っていること | 1・2・3 |
| 誰に見せるか | 4 |
| どこで使うか、どのくらいの長さにするか | 5・13 |
| 何を伝えたいか | 6・7 |
| どんな雰囲気にしたいか、参考にしたい動画はあるか | 9 |
| 使える素材はあるか | 8 |
| いつまでに必要か | 10 |
| 社内で誰が確認し、誰が決めるか | 11・12 |
| 予算はどのくらいか | 15 |
打ち合わせには、企画書のほかに、9で挙げた参考動画のURLと、8で挙げた素材のうち見せられるもの(画面のキャプチャ、資料、ロゴなど)を持っていきます。
ヒアリングシートを持って打ち合わせに臨む進め方
- 打ち合わせの前に、企画書と参考動画を送る。 先に読んでもらえば、打ち合わせは書いてあることの説明ではなく、確認と相談から始められます。ヒアリングシートの回答も一緒に送ると、企画書に盛り込みきれなかった背景や前提まで伝わります。
- 最終的に決める人か、その考えを聞いている人が出る。 11に書いた人が出られないときは、事前に企画書を見てもらい、気にしている点を聞いておきます。
- 当日は、相談事項と制作会社からの質問に時間を使う。 相談事項に書いた欄から話し、まだ決められない理由(予算は見積を見てから決める、など)も伝えます。その場で答えられない質問は、相談事項に足して持ち帰ります。
- 決まったことを書き足し、ほかの会社にも同じ条件で伝える。 打ち合わせで決まったことや、新しく出てきた条件(追加で用意する素材、確認の回数など)は、ヒアリングシートと企画書に書き足します。複数の会社と打ち合わせるなら、ある会社との打ち合わせで変わった条件は、ほかの会社にも同じ文面で伝えます。
- 提案と見積の提出期限を伝え、次に届くものを確かめて終える。 複数の会社に頼むなら、提出期限はどの会社にも同じ日を伝えます。次に届くのが提案か、構成案か、見積かも確かめます。
4で条件をそろえておくのは、返ってきた見積を同じ条件で比べるためです。 比べ方は次の節で説明します。
企画書ができたら:外注に渡す、またはNoLangで作る
外注する場合:同じ条件で見積を取り、比べる
打ち合わせの後に見積を頼むときは、見積の条件になる欄(「納品する版」「使う素材と用意するもの」「進め方と確認」「費用の前提」)の内容を、どの会社にも同じ文面で渡します。 条件が会社ごとに違うと、返ってきた金額を並べても比べられないためです。 記入例の企画書なら、渡す条件は次のとおりです。
| 条件 | 書くこと | 記入例の企画書では |
|---|---|---|
| 版の数と違い | 版ごとの使う場所、尺、縦横、結び | ブース版とWeb版の2つ。違うのは結びの場面だけ |
| 字幕と音声 | 字幕の有無と言語、ナレーションの有無と読む人 | 2つの版とも日本語の全編字幕とナレーション。読む人は未定なので、ナレーターと合成音声の2通りで見積もってもらう |
| 確認と直す範囲 | 確認の回数と、そのたびに頼む直しの範囲 | 構成案、完成前、最終確認の計3回で、そのたびに直しを1回。構成案の後は文言と図の直しまで |
| 用意する素材 | こちらが渡すものと、作ってもらうもの | サービス画面のキャプチャ、料金比較の資料、ロゴを渡す。説明用の図は作ってもらう |
| 日程 | 使い始める日と、最終確認の日 | 展示会の初日と、その2週間前の最終確認。Web版もブース版と同時に納品 |
| 予算 | 上限か幅。未定なら誰がいつ決めるか | 未定。見積がそろった時点で営業部長が決める |
打ち合わせで伝えた提案と見積の提出期限も、この文面に書き添えます。 見積が返ってきたら、金額を比べる前に、各社がこの条件どおりに見積もっているかを確かめます。
| 確かめること | 見るところ |
|---|---|
| 版 | 2つの版がどちらも入っているか。Web版を結びの差し替えとして数えているか、1本分として数えているか |
| 字幕とナレーション | 全編字幕が入っているか。ナレーターと合成音声の2通りの金額が分かれて出ているか |
| 確認と修正 | 見積に含まれる修正の回数に、3回の確認の後の直しがすべて入っているか。構成案の段階の直しを修正に数えているか。超えたときの扱いが書いてあるか |
| 素材 | 説明用の図を作る作業が入っているか |
条件と違う見積があれば、金額で比べる前に、条件をそろえて出し直してもらいます。 見積書でほかに確かめておく項目(素材の権利や、公開後の差し替えなど)は、動画制作の費用相場の「見積もりで確認すべき項目」で扱っています。
返ってくる構成案は、企画書の「動画の方針」欄に照らして確認します。 方針で全編に字幕を入れると決めているのに、提案がナレーション頼みの構成なら、その場で指摘できます。 構成案から台本を書いて完成動画に仕上げるまでは、解説動画を例に解説動画の作り方で扱っています。
内製する場合:NoLangで作る
内製する場合は、企画書の「構成の要点」から場面ごとの台本を書き、動画にします。 版が2つあるなら、台本も版ごとに用意します。 記入例のWeb版なら、結びの文だけを資料請求の案内に替えた台本になります。 記入例の企画書からNoLangで作った完成動画(ブース版)がこちらです。
そろえ便 展示会ブース用紹介動画
備品の発注、部署ごとにバラバラになっていませんか。 同じコピー用紙を、営業部と管理部が別々に注文する。単価も送料も、まとめれば下がるのに、誰もまとめる時間がない。 そろえ便は、会社の備品発注を一つの窓口にまとめるサービスです。 各部署は、いつもの画面から必要な品を申請するだけ。 申請は会社単位でまとめて発注されるので、単価と送料が下がります。発注の履歴も、一つの画面で確認できます。 導入は、お申し込みと初期設定だけ。翌月から使い始められます。 詳しくは、このブースで。担当がご説明します。
企画書の方針は、動画の次の箇所に現れています。 冒頭の場面は、画面に「備品の発注、部署ごとにバラバラになっていませんか?」の一文を最初から大きく出し、歩きながらでも課題が読めるようにしています。 それ以外の場面では読み上げる文をそのまま字幕にしているので、冒頭から最後まで、音が聞こえなくても筋が追えます。 撮影素材がなく(8)、人物が主になる実写は避けたい(9)という回答のとおり、人物は出さず、申請画面と発注の流れを図と文字で見せています。 最後の場面は「詳しくは、このブースで」として、ヒアリングの1に書いた行動につないでいます。 サイトに置くWeb版で替えるのは、この最後の場面です。
上のテンプレートを開き、自分の企画書の「構成の要点」から書いた台本を入れると、同じ構成で自分の動画を作れます。 場面ごとの台本の書き方は構成案の場面表を参照してください。
まとめ
ヒアリングシートは制作会社のために埋めるものではなく、自分たちが動画の前提を決めるための問いです。 15の欄は上から順に答え、1・4・5・6・11の5欄は曖昧でも未定にせず、動画の種類に合わせて重くなる欄を厚く書きます。 書き終えたら、してほしい行動が一つに絞られているか、見る場面の音と画面の向き、素材の使える範囲、最終的に決める人まで書かれているかを見直します。 企画書は、回答を10欄に写し、「動画の方針」と「納品する版」だけ自分たちで判断を書いて、最終的に決める人に確かめてから渡します。 決める人が確かめること(目的、費用で手に入るもの、日程、素材)に欄で答え、判断の横に元になった回答を添えておくと、企画書だけで判断してもらえます。 記入例の展示会用動画では、「音が聞こえない」「歩きながら見る」という視聴場面の回答が、文字量と冒頭の作りを決めました。 展示会の後にサイトでも使う予定からは、結びだけを替えたWeb版が加わり、版の数がそのまま見積の条件になりました。 外注するなら、企画書を打ち合わせの前に送り、決まった条件を各社に同じ文面で伝えたうえで、条件どおりの見積かを確かめてから金額を比べます。 自分の題材でも、5の視聴場面と13の使う場所を具体的に書いておくと、方針と版の欄が埋まりやすくなります。
企画書が通った後、外注せずに社内で動画を作り続ける場合は、作例のようなテンプレートをお手本にして、企画書の「構成の要点」から書いた台本を入れ、NoLangで動画にできます。 会社での使い方はお問い合わせから相談でき、法人向けの資料は下のボタンから請求できます。
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