「動画の構成案を出してほしい」と言われて、真っ白な表を前に手が止まることがあります。 欄の名前は分かるのに、何をどこまで書けばいいのかが分かりません。 その迷いの多くは、構成案が「文章」ではなく「場面ごとの対応表」だと分かれば解消されます。
この記事では、構成案の書式(企画欄と場面表)と、その書式で記入した例、その記入内容からNoLangで作った完成動画を、一つの題材で並べて紹介します。 書式だけ知りたい場合は「構成案の書式:企画欄と場面表」へ進んでください。
構成案・台本・絵コンテ・企画書の違い
構成案を書く前に、似た名前の文書と役割を分けておきます。 呼び方は会社や制作会社によって少しずつ違いますが、何を決める文書かで分けると次の4つになります。
| 文書 | 決めること | 作る時期 | この記事で扱うか |
|---|---|---|---|
| 企画書 | 目的、対象、予算、納期を社内で合意する | 制作の可否を決めるとき | 扱わない |
| 構成案 | 場面ごとに、何を見せて何を言うかを表にする | 企画が通ったあと、台本の前 | 中心 |
| 台本 | 構成案のナレーション欄を、読み上げる文章として確定する | 構成案が固まったあと | 仕上げ方を説明 |
| 絵コンテ | 構成案の画面欄を絵にする | 撮影やアニメーションの指示が必要なとき | 扱わない |
動画構成を決める土台が構成案で、台本と絵コンテはその上に作ります。 場面の順番と、各場面で見せるものと話すことが決まっていれば、台本はナレーション欄を整えるだけで書け、絵コンテは画面欄を絵に置き換えるだけで済みます。 逆に、構成案を飛ばして台本から書き始めると、話す内容と見せるものがずれたまま進み、あとで場面の順番ごと直すことになります。
構成案の書式:企画欄と場面表
構成案は、動画1本につき1組の企画欄と、1場面につき1行の場面表の二つで書くと、決めることが抜けにくくなります。 表計算ソフトでも文書でも、次の欄をこの順に並べれば同じ書式になります。
企画欄(動画1本につき1組)
| 欄 | 書くこと | 記入 |
|---|---|---|
| 動画の目的 | 見終わった人にしてほしい行動を一つ | |
| 見てほしい人 | 役職や経験、どんな場面で見るかまで | |
| 一番伝えること | 一文で。二つ以上あるなら別の動画にする | |
| 見る場所と長さ | 配信先、音を出せるか、目安の秒数 | |
| 見せられる素材 | 手元にある画面、写真、資料。これから撮る・作るものは分けて書く |
場面表(1場面につき1行)
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| No. | 場面の通し番号。動画の場面と対応させる |
| 場面の役割 | その場面が動画の中で果たす機能。導入、結論、手順、理由、案内など |
| 画面に出すもの | 映像と、画面に表示する文字の両方。ナレーションと同じ文をそのまま画面に載せると、読む文字と聞く言葉が重なって、どちらも頭に残らない |
| ナレーション(読み上げ) | 実際に読み上げる文章。台本の元になる |
| 秒 | 書いたあとに声に出して読み、かかった時間。合計が「見る場所と長さ」に収まるかを見る |
| 確認メモ | 数値、固有名詞、素材の有無を、誰に確かめるか |
書く順番
欄は左から埋めるものではありません。 企画欄の「動画の目的」と「一番伝えること」を先に決め、次に場面表の「場面の役割」だけを縦に並べ、その後で「画面に出すもの」と「ナレーション」を埋め、最後に読み上げて「秒」を入れる順に進めると書きやすくなります。
役割だけを先に並べるのは、この段階なら順番の入れ替えや場面の削除が一行の移動で済むからです。 ナレーションまで書いてから順番を変えると、前後の文のつながりも書き直すことになります。
「場面の役割」を並べるときは、動画で起こしたい変化に合わせて、次のどちらかの型から始めると迷いにくくなります。
| 型 | 役割の並び | 向いている動画 |
|---|---|---|
| 説明型 | 導入 → 結論 → 理由や手順 → 結論の言い直し → 次の行動 | 業務の手順、機能の説明、社内の案内 |
| 共感型 | 悩みの提示 → 解決策 → 使ったあとの変化 → 次の行動 | 商品やサービスの紹介、採用の呼びかけ |
どちらの型でも、「一番伝えること」は一つに絞ります。 二つ入れたくなったら、伝えることが二つある動画ではなく、動画が二本必要なのだと考えてください。
記入例:経費精算の説明動画を書式に書く
同じ書式で、社内向けの説明動画を一本書いてみます。 題材は「経費精算を月内に終える3つの手順」で、社内ルールや締切日はこの記事のための架空の設定です。
企画欄の記入例
| 欄 | 記入 |
|---|---|
| 動画の目的 | 月末までに経費精算の申請を出してもらう |
| 見てほしい人 | 入社1年目で、初めて経費精算をする社員。社内チャットで案内を受け取り、スマホかPCで見る |
| 一番伝えること | レシートを受け取ったその日に申請すれば、月内に終わる |
| 見る場所と長さ | 社内チャットで共有。音を出せない場所でも読めるようにする。60〜90秒 |
| 見せられる素材 | 申請フォームの項目名、締切のカレンダー。撮影は不要で、画面の文字とイラストで示す |
企画欄で時間がかかるのは「一番伝えること」です。 最初に思いつくのは「経費精算の手順を知ってもらう」ですが、これでは見終わった人が何をするのかが決まりません。 「レシートを受け取ったその日に申請する」まで絞ると、動画の結論が一文で言え、場面2の結論にそのまま入ります。
場面表の記入例
場面表は1場面ずつ、欄の順に並べています。
場面1|導入(誰向けか)(7秒)
- 画面に出すもの:タイトル「経費精算を月内に終える3つの手順」。小さく「初めて申請する人へ」
- ナレーション:初めて経費精算をする方へ。申請を月内に終えるための、3つの手順を説明します。
- 確認メモ:対象者の呼び方を人事の案内文に合わせる
場面2|結論(10秒)
- 画面に出すもの:大きく「レシートを受け取った日に申請」
- ナレーション:大事なことは一つです。レシートを受け取ったその日に申請すること。これだけで、月末に慌てずに済みます。
- 確認メモ:なし
場面3|手順1(9秒)
- 画面に出すもの:「① レシートを撮影」。スマホでレシートを撮るイラスト
- ナレーション:手順1。レシートをスマホで撮影します。日付と金額が読める向きで撮ってください。
- 確認メモ:撮影に使うアプリの名前を総務に確認
場面4|手順2(12秒)
- 画面に出すもの:「② 申請フォームに入力」。項目「日付・金額・目的」
- ナレーション:手順2。申請フォームに、日付、金額、目的の3つを入力します。目的は、誰と何のためかが分かる一文にします。
- 確認メモ:フォームの項目名を現行の画面に合わせる
場面5|手順3(11秒)
- 画面に出すもの:「③ 上長に承認依頼」。「締切:毎月25日」
- ナレーション:手順3。入力が終わったら、上長に承認を依頼します。承認の締切は、毎月25日です。
- 確認メモ:締切日を経理の年間予定で確認
場面6|よくある詰まりどころ(9秒)
- 画面に出すもの:「レシートをなくしたら?」→「経理に相談」
- ナレーション:レシートをなくしたときは、自分で判断せず、経理に相談してください。代わりの書類で申請できる場合があります。
- 確認メモ:代わりの書類の条件を経理規程で確認
場面7|次の行動(12秒)
- 画面に出すもの:「今月の分を、今日申請しよう」。「社内ポータル > 経費精算」
- ナレーション:今月の分がまだなら、今日のうちに申請しましょう。フォームは、社内ポータルの「経費精算」から開けます。
- 確認メモ:ポータルのメニュー名を最新にする
各場面の秒は、この記入例から作った完成動画(次の節)で、場面が切り替わるまでの時間を測った値です。 合計は約70秒で、企画欄の「60〜90秒」に収まっています。 書いている段階では、ナレーションを普通の速さで読み上げた時間を入れておき、動画ができたら測り直します。 文字数の目安は1秒あたり5文字前後で、この記入例では読み上げの目安が63秒、完成動画が70秒でした。
画面欄とナレーション欄は、同じことを二度言わないように役割を分けています。 たとえば場面5では、締切の「毎月25日」を画面の文字に置き、ナレーションでは承認を依頼するという行動を伝えています。 日付は見て確かめたい情報で、行動は聞いて分かれば十分だからです。 場面2も同じで、画面には結論の短い言葉だけを出し、理由(月末に慌てずに済む)はナレーションに任せています。
「確認メモ」の欄は、書いた本人が関係部署に事実を確かめるための欄で、あとから内容を見直す人の手がかりにもなります。 締切日や項目名のように、時間が経つと変わる情報をここに集めておくと、社内ルールが変わったときにどの場面を直せばいいかがすぐに分かります。
題材を商品やサービスの紹介に変える場合も、書式は同じです。 共感型の並び(悩み → 解決策 → 変化 → 次の行動)で役割を置き換える例は、商品紹介動画の作り方で構成ごとに見られます。
記入した構成案をNoLangで動画にする
上の場面表を、そのまま動画にしました。 NoLangのテンプレートに、7行のナレーション欄をつなげた台本を入力して生成しています。 画面に出る文字は場面表の「画面に出すもの」欄に沿っており、全体の長さは69.6秒、サイズは横型の1280×720pxです。
経費精算を月内に終える3つの手順
以下の台本を、そのまま読み上げて。
【台本】
初めて経費精算をする方へ。申請を月内に終えるための、3つの手順を説明します。
大事なことは一つです。レシートを受け取ったその日に申請すること。これだけで、月末に慌てずに済みます。
手順1。レシートをスマホで撮影します。日付と金額が読める向きで撮ってください。
手順2。申請フォームに、日付、金額、目的の3つを入力します。目的は、誰と何のためかが分かる一文にします。
手順3。入力が終わったら、上長に承認を依頼します。承認の締切は、毎月25日です。
レシートをなくしたときは、自分で判断せず、経理に相談してください。代わりの書類で申請できる場合があります。
今月の分がまだなら、今日のうちに申請しましょう。フォームは、社内ポータルの「経費精算」から開けます。
動画の場面は、記入例の場面番号と同じ順に並んでいます。 最初の画面がタイトル(場面1)、次が「レシートを受け取った日に申請」の結論(場面2)、そのあとに手順1から3(場面3〜5)、詰まりどころ(場面6)、最後が申請への案内(場面7)です。 記入例の一つの場面が動画の一場面になっているので、動画を見ながら記入例を追うと、欄に書いたことが画面のどこに出て、ナレーションでどう読まれるかを確かめられます。
上の「このテンプレートで作る」から同じテンプレートを開き、自分の場面表のナレーション欄を台本として入れると、自分の題材の動画になります。
テンプレートを使わずに作る場合は、NoLangのホームで「台本から」を押します。 入力欄に「以下の台本を、そのまま読み上げて。」という指示が入るので、その下に場面表のナレーション欄をつなげた文章を貼り付けて生成します。 画面に出す文字は、生成後の編集で場面表の「画面に出すもの」欄に合わせて整えます。
業務の手順を伝える動画を続けて作る場合は、動画マニュアルの作り方で、手順書や資料から作る方法も確認できます。
ナレーション欄を台本に仕上げる
場面表のナレーション欄がそろえば、台本はほぼできています。 構成案と読み上げ文をひとまとめにして「構成台本」と呼ぶ会社もありますが、指しているものは同じ表と文章です。 読み上げ用の文章として整えるときに見るのは、次の3点です。
一つめは、一文を短くすることです。 文字で読むと自然な長い文も、声にすると息継ぎの場所が分からず、聞く側は前半を忘れます。 記入例の場面4を一文にまとめると「申請フォームに日付と金額と目的を入力し、目的は誰と何のためかが分かるように一文で書きます」になりますが、記入例では「3つを入力します」で一度切り、目的の書き方を次の文に分けています。
二つめは、数値と固有名詞を、確認メモに書いた相手に確かめてから確定することです。 ナレーションは生成したあとに直せますが、読み上げ済みの動画を社内に配ってから「締切は25日ではなく20日だった」と分かると、動画ごと作り直しになります。
三つめは、画面に出す文字と同じ文を繰り返さないことです。 記入例の場面3〜5では、画面に「① レシートを撮影」のような短い見出しを置き、ナレーションでは撮り方や入力の仕方といった、見出しだけでは分からない部分を話しています。 見出しをそのまま読み上げる文にすると、聞く側は画面を読み終えた内容をもう一度聞かされることになります。
この3点を踏まえて整えた文章が、上の完成動画に入力した台本です。 場面表の欄と、実際に読み上げられた文の対応は、動画の下に掲載した台本で確認できます。
自分の題材で構成案を書く
この書式で決めるのは、動画の目的と一番伝えること、そして場面ごとに見せるものと話すことの対応です。 記入例では、この対応を場面ごとに書いてから動画にしたので、記入例の場面と動画の場面が一対一で並びました。
自分の題材で始めるときは、企画欄の「一番伝えること」を一文にするところから手を付けてください。 そこが決まれば、場面2の結論が埋まり、残りの場面はその一文を支える理由や手順を並べる作業になります。 場面表を埋め終えたら、ナレーション欄をつなげて、NoLangのテンプレートか「台本から」に入力すれば、記入例と同じ流れで完成動画になります。