ナレッジとは?意味とノウハウとの違い、職場の知識を共有して残す方法

この記事の要点

  1. ナレッジは「知識・情報」のほか、組織にとって有益な知識・経験・事例・ノウハウなど付加価値のある情報を指す(『デジタル大辞泉』)。
  2. ノウハウはナレッジの一部。ナレッジには、事例や記録、判断の基準も含まれる。
  3. 経験や勘に基づく暗黙知を、文章・図・動画などの形式知にすると、ほかの人が学べる形になる。
  4. 共有は「残すナレッジを選ぶ」「聞き出す」「残す形を選ぶ」「置き場所を決める」「見直す」の5つの手順で進める。
  5. 動きや話し方、判断の流れは、動画で残すと伝わりやすい。
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ナレッジとは、仕事に役立つ知識や経験のことです。 辞書では「知識・情報」のほか、「企業などの組織にとって有益な知識・経験・事例・ノウハウなど付加価値のある情報」と説明されています(小学館『デジタル大辞泉』)。 職場で「ナレッジを共有する」と言うときは、一人ひとりが仕事の中で身につけた知識やコツを、ほかの人も使える形にして渡すことを指します。

この記事では、ナレッジの意味と使い方、ノウハウやスキルとの違い、暗黙知と形式知、SECIモデルを説明したうえで、職場でナレッジの共有が進まない理由と、知識を文書や動画で残して共有する手順を紹介します。 後半では、営業の先輩が商談の前に確かめていることを、新人向けの動画に残した作例を掲載しています。 作例はNoLangで作り、同じ形の動画を作れるテンプレートとして公開しています。

ナレッジとは

辞書での意味

「ナレッジ」は、英語の knowledge をカタカナで書いた言葉です。 『デジタル大辞泉』は、ナレッジを次の2つの意味で説明しています。

  • 知識・情報。
  • 企業などの組織にとって有益な知識・経験・事例・ノウハウなど付加価値のある情報。

ビジネスの場で使われるのは、主に2つ目の意味です。 本や研修で学べる一般的な知識よりも、その会社や職場の仕事の中で得られた知識や経験を指して使われます。

職場でナレッジと呼ばれるもの

職場のナレッジには、文書にまとまっているものと、担当者の頭の中にあるものの両方が含まれます。 例えば、次のようなものです。

職場のナレッジの例
種類例
仕事の進め方提案書の組み立て方、見積もりを出す前に確かめること
問い合わせへの答え方よく聞かれる質問と、そのときの答え方
トラブルへの対処機器が止まったときに最初に見る場所、過去の不具合と直し方
判断の基準値引きに応じてよい条件、上司に相談する場面
成功と失敗の事例受注につながった提案、クレームになった対応とその後の改善

使い方と例文

ビジネスでは、次のように使います。

  • このプロジェクトで得たナレッジを、次の案件のためにチームで共有しましょう。
  • 彼女は既存のお客様への対応について、豊富なナレッジを持っている。
  • 問い合わせへの回答を、ナレッジとして部署のフォルダにまとめておく。

ナレッジとノウハウ・スキルの違い

ナレッジと似た言葉に、ノウハウとスキルがあります。 『デジタル大辞泉』の説明をもとに、3つの言葉を比べます。

ナレッジ・ノウハウ・スキルの違い
言葉辞書での意味職場の例
ナレッジ組織にとって有益な知識・経験・事例・ノウハウなど付加価値のある情報提案の型、過去の問い合わせと答え、トラブルの記録
ノウハウある専門的な技術やその蓄積値引きを求められたときの話の運び方
スキル手腕。技量。また、訓練によって得られる、特殊な技能や技術交渉する力、表計算ソフトを使いこなす力

ナレッジは、ノウハウを含む広い言葉です。 辞書の説明にも「ノウハウ」が含まれているとおり、仕事のやり方やコツはナレッジの一部です。 ナレッジには、ノウハウのほかに、事例や記録、判断の基準なども含まれます。

スキルは、その人が実際にできる力を指します。 ナレッジは文書や動画にしてほかの人に渡せますが、受け取った人が同じことをできるようになるには、実際にやってみて身につける段階が必要です。 この段階は、後で紹介するSECIモデルの「内面化」に当たります。

暗黙知と形式知

ナレッジは、言葉で表せるかどうかで、暗黙知と形式知の2つに分けて考えられます。 もとは、哲学者マイケル・ポランニーが『暗黙知の次元』(原著1966年)で論じた考え方で、経営学者の野中郁次郎氏が、企業の知識を説明する考え方として使いました(『デジタル大辞泉』「暗黙知」「形式知」、『日本大百科全書』「暗黙知」)。

『デジタル大辞泉』は、ナレッジマネジメントでの意味(野中郁次郎の定義による)として、暗黙知を「社員や技術者が暗黙のうちに有する、長年の経験や勘に基づく知識」、形式知を「言語化・視覚化・数式化・マニュアル化された知識」と説明しています。

暗黙知と形式知の違い
観点暗黙知形式知
どんな知識か経験や勘に基づき、言葉にしにくい知識文章、図、数式、マニュアルなどで表された知識
職場の例お客様の反応を見て話す順番を変える判断、機械の音で不調に気づく感覚提案書のひな形、手順書、よくある質問と答えの一覧
伝え方一緒に働く、そばで見る、話を聞く文書やファイルを渡す、検索して読む

職場で困るのは、大事な知識が暗黙知のままで、特定の人しか持っていない状態です。 その人が休んだり、異動したり、辞めたりすると、ほかの人は同じように仕事を進められません。

暗黙知のすべてを言葉にできるわけではありません。 それでも、判断するときに見ているものや、手を止めて確かめていることを聞き出して書いたり、実際の動きや話し方を映像で見せたりすると、ほかの人が学べる形に近づけられます。

SECIモデル:ナレッジが組織に広がる4つの段階

SECI(セキ)モデルは、野中郁次郎氏と竹内弘高氏が『知識創造企業』(東洋経済新報社、1996年)で示した、組織の中で知識が生まれて広がる流れを表したモデルです。 暗黙知と形式知が、次の4つの段階で形を変えながら、個人から組織へ、組織から個人へと移っていきます。 4つの段階の英語の頭文字をとって、SECIと呼ばれます。

ここでは、営業の先輩が商談の前に確かめていることを、新人に伝える場面を例にします。

SECIモデルの4つの段階
段階知識の変わり方営業の商談準備の例
共同化(Socialization)暗黙知から暗黙知へ新人が先輩の商談に同行し、準備の仕方をそばで見て感じ取る
表出化(Externalization)暗黙知から形式知へ先輩に商談の前に見ていることを聞き、確かめる項目と理由を言葉や動画にする
連結化(Combination)形式知から形式知へほかの営業担当の確かめ方も集め、部署の商談準備のチェックリストにまとめる
内面化(Internalization)形式知から暗黙知へ新人がチェックリストと動画を見ながら準備をくり返し、見なくても準備できるようになる

内面化で身についた新人の暗黙知は、やがて次の新人に伝わり、また共同化から始まります。 この4つの段階を回し続けることで、組織の知識が増えていきます。

文書や動画でナレッジを残す作業は、このうち表出化と連結化に当たります。 そばで見て学ぶ共同化は、教える人が近くにいるときにしかできません。 表出化で形式知にしておけば、先輩が近くにいないときも、新人はくり返し見て学べます。 先輩が隣で教える進め方は、新人教育の進め方とOJTのやり方で説明しています。

ナレッジマネジメントとは

職場のナレッジを集めて共有し、仕事に生かす取り組みを、ナレッジマネジメントと言います。 『デジタル大辞泉』は、ナレッジマネージメントを「個人・グループが所有する知識や、企業内の各部門に蓄積された知識情報を、企業などの組織全体で共有して活用する仕組み。または、そのような経営手法」と説明しています。 野中氏は、暗黙知を形式知にして共有を進めることの大切さを指摘しました(『デジタル大辞泉』「形式知」)。

職場でナレッジの共有が進まない理由

ナレッジを共有しようと決めても、思うように進まないことがあります。 よくある理由と、それぞれの手当てをまとめます。

共有が進まない理由と手当て
理由起きていること手当て
残す時間がない知識を持っている人ほど忙しく、書く時間がとれない本人に書かせず、聞き取って別の人がまとめる
何を残せばよいか分からない「ナレッジを共有しよう」とだけ決めて、題材が決まっていないよく聞かれること、ミスが多い作業から選ぶ
言葉にしにくいコツや判断が暗黙知で、文章にすると長く、伝わらない動きや話し方は動画で見せる
探せない置き場所がばらばらで、名前の付け方もそろっていない置き場所を1か所に決め、名前の付け方をそろえる
古くなる手順が変わっても直されず、使われなくなる見直す人と時期を決め、更新日を書く

前の3つは残すとき、後の2つは使うときにつまずいている状態です。 次の手順では、残す人の手間を減らし、使う人が探しやすくなるように進めます。

ナレッジを残して共有する5つの手順

1. 残すナレッジを選ぶ

最初から全部を残そうとせず、効果が大きいものから選びます。 次のような知識が候補になります。

  • 新しく来た人から、くり返し聞かれること
  • ミスや手戻りが多い作業
  • 特定の人しか判断できないこと
  • 異動や退職が決まった人が担当している仕事

2. 知識を持っている人から聞き出す

暗黙知は、本人も意識していないことが多いので、質問して言葉にしてもらいます。 作業を実際に見せてもらいながら聞くと、本人が当たり前だと思っている手順や確認にも気づけます。

聞き出すときの質問の例です。

  • その仕事で、いちばん気をつけているのはどこですか。
  • 新人のころに失敗したこと、つまずいたことは何ですか。
  • いつもと違うと気づくのは、何を見たときですか。
  • AとBで迷ったときは、どちらを選びますか。その理由は何ですか。

聞いた内容は、聞き手が下書きにまとめ、本人には確認だけを頼みます。 こうすれば、知識を持っている人に文書を書く手間をとらせずに済みます。

3. 残す形を選ぶ

知識の種類によって、伝わりやすい形が違います。

知識の種類と残す形
残したい知識向いている形理由
決まった手順やルール手順書・マニュアル順番に読めて、必要な手順を探しやすい
よくある質問と答え質問と答えの一覧(FAQ)質問の言葉で探せる
判断の基準、確かめる項目チェックリスト作業しながら1つずつ確かめられる
手の動き、話し方、画面の操作動画文章では長くなる動きや間合いが、見て分かる
経験からのコツと、その理由動画と文書話し言葉で例と理由を伝え、要点は文書に残す

手順書とマニュアルの書き方は手順書の作り方とマニュアル作成の手順とコツ、手順を動画にする方法は動画マニュアルの作り方で詳しく説明しています。

4. 置き場所と探し方を決める

残したナレッジは、置き場所を1か所に決めます。 部署の共有フォルダ、社内のポータル、社内Wikiなど、ふだん使っている場所の中から選びます。

ファイルや記事の名前は、「業務の名前+内容+更新日」のように付け方をそろえます。 動画は中身を検索しにくいので、題名と説明に、扱っている業務と要点を書いておきます。

5. 見直す人と時期を決める

ナレッジは、手順や商品が変わると古くなります。 ナレッジごとに担当者を決め、手順が変わったときや、半年や1年などの決まった時期に見直します。 最後に見直した日を書いておくと、使う人が今も使える内容かを判断できます。

動画で残すと伝わりやすいナレッジ

文章だけでは伝わりにくいナレッジは、動画にすると伝わりやすくなります。

  • 動きや間合い:手の動き、作業の速さ、話すときの間など、文章にすると長くなるもの
  • 判断の流れ:何を見て、どう考えて、どちらを選んだかという順番
  • 話し方や雰囲気:お客様への言葉づかいや、声の調子

動画なら、先輩の説明を新人が何度でも見返せます。 新しい人が来るたびに、先輩が同じ説明をくり返す必要もなくなります。

一方で、動画は必要な箇所を探しにくく、数字や項目を確かめるには文書のほうが向いています。 動画で流れとコツを伝え、確かめる項目はチェックリストや手順書に残す、というように組み合わせて使います。

作例:先輩のコツを新人向けの動画に残した例

営業の先輩が商談の前に確かめていることを、新人向けの社内動画に残した作例です。 先輩の頭の中にある準備の仕方(暗黙知)を、言葉と画面で表した形式知にしているので、SECIモデルの表出化に当たります。

動画では、商談の前に確かめる5つのことを、次の順に説明します。

  1. 相手の会社の最近の動き(プレスリリース、採用、決算や中期経営計画)
  2. 当日に出席する人(決める人、使う人、窓口)と、それぞれの関心
  3. 前回の商談で約束したこと(宿題)と、その答え
  4. 今日の商談のゴール(「説明する」ではなく「次の日程が決まる」のように、相手の行動で決める)
  5. 聞かれそうな質問(価格、時期、他社との違い)への答え方

最後に、商談直前の5分で確かめること(オンラインならカメラ・マイク・共有する画面と資料、訪問なら場所と移動時間・名刺)を伝え、5つを1枚の商談前メモにまとめて締めくくります。 最初に1から5の番号を並べて見せ、章が終わるごとに印を付けていくので、見ている人は今どこまで進んだかが分かります。

先輩が、商談の前に確かめていること

営業の先輩が商談の前に確かめている5つのことを、新人向けの社内動画にして。 相手の会社の最近の動き、出席する人、前回の約束、今日のゴール、聞かれそうな質問の順に伝えて。

このテンプレートで作る

NoLangでナレッジを動画にする

作例をお手本にして作る

上の作例の「このテンプレートで作る」を押すと、NoLangのホームで作例がお手本として開きます。 入力欄に、自分の職場で残したい知識の要点(何の仕事か、誰に向けた動画か、伝えたいコツ)を書いて送信すると、作例の構成をもとにした動画ができます。

手元の文書から作る

聞き取ってまとめた手順書やマニュアルが、PDFやPowerPointのファイルになっている場合は、入力欄の「+」から添付して、その資料をもとに動画を作れます。 文書を基本にして、動きやコツを見せたい部分だけを動画にする使い方もできます。

直して、配る

できた動画は、動画エディターで台本や字幕を書き換えて修正できます。 手順が変わったときも、台本を書き換えて作り直せます。

完成した動画は、動画のページの「ダウンロード」で保存して、部署の共有フォルダなど社内の置き場所に置けます。 「その他」の「共有リンク」で動画を公開すると、リンクを知っている人が視聴できるようになります。 動画の共有方法による違いは、動画を共有する方法で説明しています。

会社でナレッジを動画にして残すには

会社では、部署ごとにたまっている手順書や研修の資料から動画を作り、新しく来た人や異動してきた人に、いつでも同じ説明を見てもらう使い方ができます。 会社での使い方はお問い合わせから相談でき、詳しい資料は下のボタンから請求できます。

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よくある質問

「ナレッジする」とはどういう意味ですか?
『デジタル大辞泉』では、ナレッジは「知識・情報」などを表す名詞として説明されています。「ナレッジする」と言われたときは、知識をまとめることか、共有することかを、話の流れから確かめると行き違いを防げます。文書では「ナレッジを共有する」「ナレッジとしてまとめる」のように、何をするかが分かる書き方にすると伝わります。
ナレッジの言い換えには、どんな言葉がありますか?
意味に合わせて「知識」「知見」「ノウハウ」「経験」「事例」などに言い換えられます。仕事のやり方やコツを指すなら「ノウハウ」、実際に見聞きして得た知識を指すなら「知見」が近い言葉です。社外の人に向けた文書や、カタカナ語になじみのない人が読む文書では、「知識」「知見」と書くと伝わりやすくなります。
「ナレッジ化」とはどういう意味ですか?
個人が持っている知識や経験を、文書、チェックリスト、動画など、ほかの人も使える形にまとめることです。経験や勘に基づく暗黙知を、言葉や映像で表した形式知にする作業で、SECIモデルの表出化に当たります。
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