「動画広告を出そう」と決まったあと、最初に困るのは作り方ではなく、決める順番です。 種類を調べればインストリームとアウトストリームが出てきて、媒体を調べればYouTubeからLINEまで並び、効果を調べれば指標が十種類ほど出てきます。 どれも正しいのに、どれから決めればいいのかは、どの一覧にも書いてありません。
この記事では、動画広告の種類・媒体・指標を「目的から決める」順番に並べ直します。 知ってもらうのか、比べてもらうのか、申し込んでもらうのか。目的を一つに決めると、形式・媒体・見る指標・動画に必要なことが一度に決まる表を用意し、架空の題材でその表を最後まで使った企画例と、その企画からNoLangで作った完成動画を掲載します。 表だけ見たい場合は「目的から、形式・媒体・指標・動画の要件を決める」へ進んでください。
動画広告とは:制作・配信・測定を分けて考える
動画広告とは、YouTubeやSNS、ニュースサイトなどのWeb上の広告枠に、動画の形で出す広告です。 誰に、どこで、いくらまで出すかを媒体の管理画面で設定し、何回表示され、何回見られ、何回クリックされたかも同じ画面で確認できます。 テレビCMや自社サイトに置く紹介動画と違うのは、この「設定と結果が一つの画面にある」ところです。
初めて担当する人が見落としやすいのは、動画広告の仕事が三つに分かれている点です。
| 仕事 | すること | 主な道具 |
|---|---|---|
| 制作 | 広告に使う動画を作る | 制作会社、社内の編集、NoLangのような制作ツール |
| 配信 | 媒体で対象・予算・入札を設定し、出稿する | 各媒体の広告管理画面 |
| 測定 | 表示・視聴・クリック・その後の行動を確認し、次の動画に反映する | 各媒体の管理画面、自社サイトの計測 |
この三つのうち、どれを自分で持ち、どれを外に頼むかを先に決めておくと、後の判断が楽になります。 制作だけ社内で行い配信は代理店に任せる会社もあれば、少額で全部を自分で回す会社もあります。 この記事で扱うのは、三つに共通する手前の作業、つまり「何のために、どこに、どんな動画を出すか」を決めるところまでです。
種類:どこで、どんな状態の人に見られるか
動画広告の種類は、形式の名前で覚えるより、「見る人がそのとき何をしている最中か」で分けたほうが、作り方まで一度に決まります。 同じ30秒の動画でも、別の動画を見に来た人の前に流れるのと、投稿をスクロールしている人の指の下に現れるのとでは、求められる作りが違うからです。
| 大分類 | 代表的な形式 | 見る人の状態 | 動画に必要なこと |
|---|---|---|---|
| インストリーム(動画の前後・途中) | スキップ可能なインストリーム広告、スキップ不可のインストリーム広告、バンパー広告(最長6秒) | 別の動画を見に来ている。音は出ていることが多い | スキップされる前の数秒で、誰向けかと結論を出す。短い形式は一つの言葉に絞る |
| アウトストリーム:フィード・投稿の間 | インフィード動画広告、フィード・ストーリーズ・リール面の動画、YouTubeショートの広告 | 投稿を眺めてスクロールしている。無音が多く、縦画面 | 止まった瞬間に読める文字。全編テロップ。縦横は配信面に合わせる |
| アウトストリーム:サイト・アプリの広告枠 | インバナー広告、インタースティシャル広告 | 記事やアプリを使っている。動画を見る目的ではない | 小さな枠でも読める文字とサービス名。音に頼らない |
| テレビ画面 | コネクテッドTVや見逃し配信のCM枠 | テレビとして見ている。スキップできないことが多い | テレビCMに近い作り。クリックはされない前提で、検索する名前を覚えてもらう |
インストリームには、動画の前に流れるもの、途中に入るもの、終わった後に流れるものがありますが、見る人の状態は共通しています。 その人は広告ではなく、次の動画を待っています。 だから冒頭の数秒で「自分に関係がある」と分からなければ、スキップ可能ならスキップされ、スキップ不可でも内容は残りません。
アウトストリームは逆で、見る人は動画を見るつもりがありません。 スクロールの途中で動きが目に入り、止まるかどうかを一瞬で決めます。 音は出ていないことが多いので、頼れるのは画面の文字だけです。 同じ動画を両方に出すと、片方では音声が頼りになり、もう片方では音声が一切届かない、ということが起きます。 種類を先に決める理由は、この違いを動画の設計に織り込むためです。
動画広告の媒体:一覧より先に、目的と場を決める
動画広告を出せる媒体は多く、それぞれに利用者層の説明が付いています。 ただ、利用者層の数字は調査の時期によって変わり、その層が自社の顧客と重なるかどうかは、自社の顧客データでしか分かりません。 先に決めるのは媒体名ではなく、「自社の顧客が普段どこにいるか」と「そこはどんな場か」です。
| 場の種類 | 媒体の例 | 見る人の状態 | 向きやすい目的 |
|---|---|---|---|
| 動画を見に来る場 | YouTube、TVer、ABEMA | 動画を見るつもりで開いている | 知ってもらう、比べてもらう |
| 投稿を眺める場 | Instagram・Facebook(Meta)、TikTok、X、LINE(LINE VOOM など) | 投稿を流し見している。無音・縦画面が多い | 知ってもらう、比べてもらう、申し込んでもらう |
| サイト・アプリの広告枠 | Google ディスプレイ ネットワーク、Yahoo!ディスプレイ広告 | 記事やアプリを使っている | 知ってもらう、一度サイトに来た人への再アプローチ |
| テレビ画面・その他 | コネクテッドTV、タクシーや施設のサイネージ | テレビや画面の前にいる。操作しない | 知ってもらう |
媒体を絞る手順は三つです。 まず、自社の顧客が普段いる場を一つか二つ挙げます。 次に、その媒体の広告ヘルプで、使える形式・尺・縦横比・課金の単位を確認します。 最後に、次の章の表で、目的の行に合う形式がその媒体にあるかを確かめます。 この順で見ると、候補は自然に二つか三つに減ります。 最初からすべての媒体に出そうとしない理由は、動画を媒体ごとに作り分ける必要があり、出す場が増えるほど作る本数も増えるからです。
目的から、形式・媒体・指標・動画の要件を決める
「認知も広げたいし、申し込みも増やしたい」と両方書きたくなるのは自然です。 ただ、動画広告では目的を一つに絞らないと、動画も指標も中途半端になります。 名前を覚えてもらう動画と、申し込みボタンを押してもらう動画は、冒頭も尺も最後の一言も違うからです。 目的は「知ってもらう」「比べてもらう」「申し込んでもらう」の三つから一つを選びます。
| 目的 | 主な形式 | 媒体の候補 | 主に見る指標 | 動画に必要なこと |
|---|---|---|---|---|
| 知ってもらう(まだ知らない人に、名前と一言を覚えてもらう) | スキップ可能なインストリーム、バンパー、ショート・リール面、テレビ画面 | YouTube、TVer など、Meta・TikTok の縦型面 | 表示回数、リーチ、TrueView 視聴回数(YouTube)、完全視聴率、ブランドリフト・サーチリフト | 冒頭2〜3秒で誰向けか。一言の結論。サービス名を最後まで表示。6〜15秒が目安 |
| 比べてもらう(知っている人に、違いを理解して候補に入れてもらう) | インフィード動画広告、フィード・インリード、リターゲティング | YouTube インフィード、Meta・LINE のフィード、GDN・YDA | 完全視聴率、再生時間、クリック率、遷移後の滞在・回遊、ビュースルーコンバージョン | 課題→違い→利点の順。無音でも読める文字。案内先はサービス紹介ページ。15〜30秒が目安 |
| 申し込んでもらう(検討中の人の背中を押す) | フィード・インフィードのリターゲティング、インバナー | Meta・LINE・GDN・YDA のリターゲティング、YouTube インフィード | クリック率、コンバージョン数、コンバージョン率、CPA、ROAS | 具体的な行動を一つ(資料を見る、試す)。期間や条件は文字で。案内先は申込ページ。10〜20秒が目安 |
尺の数字は目安で、媒体ごとの上限が優先です。 形式と指標の名前は、Google広告ヘルプの動画広告フォーマットの概要など各媒体の公式ヘルプに揃えています。 YouTubeの「視聴回数」は2025年10月から「TrueView 視聴回数」という名称になり、指す内容は同じです。
課金方式も、この表の「主に見る指標」と同じ軸で決まります。 表示された回数に払うのか(CPM)、一定時間見られた回数に払うのか(CPV)、クリックされた回数に払うのか(CPC)、という三つです。 知ってもらうのが目的なら表示か視聴に、申し込みが目的ならクリックに払うのが自然で、媒体の管理画面でも目的を選ぶと課金の単位が絞られます。 単価は媒体・時期・競合によって変わります。動画そのものの制作費は動画制作の費用相場にまとめています。
表の右端の「動画に必要なこと」は、前の章の「見る人の状態」から導いています。 知ってもらう動画がインストリームやショート面に出るなら、見る人は別の何かを待っているので、冒頭で誰向けかを言い切り、一言で終わらせます。 比べてもらう動画がフィードに出るなら、無音でスクロールする人が止まって読める文字で、課題から順に並べます。 目的を決めると形式が決まり、形式が決まると見る人の状態が決まり、そこから作り方が決まります。 順番はこの一方向です。
動画広告の効果の測り方:再生回数だけで判断しないために
目的ごとに見る指標は前の表にまとめました。 ここでは、数字を読むときに迷いやすい点を三つに絞ります。
一つめは、同じ「視聴回数」でも媒体によって数え方が違うことです。 YouTubeのスキップ可能なインストリーム広告では、30秒以上(30秒未満の広告は最後まで)見られるか、途中で操作されたときに1回と数えます。 別の媒体では、画面に表示されて数秒たった時点で1回と数えるものもあります。 媒体をまたいで視聴回数を並べて比べる意味は薄く、同じ媒体の中で前の動画と比べるのが基本です。
二つめは、指標を段で読むことです。 表示回数とリーチは「届いたか」、完全視聴率とクリック率は「伝わったか」、コンバージョン数とCPAは「動いたか」を示します。 知ってもらうのが目的なら最初の段を、申し込みが目的なら最後の段を主に見て、手前の段は原因を探すときに使います。 再生回数が多いのに問い合わせが増えないなら、「伝わったか」の段(完全視聴率、クリック率)を見ると、動画の途中で離脱しているのか、クリック先で止まっているのかを切り分けられます。
三つめは、動画を見てすぐ申し込む人は少ない、ということです。 広告を見て名前を覚え、あとで検索して申し込む人は、広告のクリック数には残りません。 媒体の管理画面には、クリックせずに視聴した人がその後にコンバージョンした数(ビュースルーコンバージョン)や、広告に接触した人としていない人の認知の差を調べる仕組み(ブランドリフト調査)が用意されています。 知ってもらうのが目的の動画は、こうした指標と、指名検索の増減を合わせて見ます。
判断する期間は、配信量にもよりますが、最初の見直しまで2週間程度を目安にします。 一本で判断せず、訴求の違う動画を二本並べて配信し、反応の良い方へ予算を寄せる形にすると、判断の材料が自分の配信結果からそろいます。 動画広告が効果的かどうかは、他社の平均値ではなく、前の表で選んだ目的の行に沿って、自社の数字から判断します。
企画例:経費精算クラウドの広告を、決めるところまで
ここまでの表を、一つの題材で最後まで使ってみます。 題材は架空の中小企業向け経費精算クラウド「つきまる精算」で、実在のサービスや数値とは関係ありません。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 目的 | 比べてもらう。経費精算のクラウド化を検討し始めた総務・経理担当に違いを理解してもらい、サービス紹介ページを見てもらう |
| 視聴者 | 従業員30〜100人の会社の総務・経理担当。月末に紙の領収書を集めて集計している |
| 見る場面 | 通勤中や昼休みにスマホで投稿を眺めている。無音。縦画面 |
| 形式・媒体 | フィード・インフィードの縦型。第一候補はYouTubeショートの広告と、Instagram・Facebookのフィード |
| 課金と指標 | クリック課金か表示課金(媒体の設定に従う)。見るのは完全視聴率とクリック率、遷移後のページ滞在。2週間で最初の判断 |
| 動画に必要なこと | 冒頭2秒で「月末の経費精算に、3日かかっている総務の方へ」と文字で明言。課題→違い(領収書はスマホで撮るだけ)→利点(月末の集計がなくなる)の順。全編テロップで、ナレーションは補助。最後に「サービス紹介ページで詳しく」。20〜30秒、縦型9:16 |
| 制作 | NoLangで作る。台本は上の順で場面ごとに書く |
各欄は、前の章までの表の内容にそれぞれ対応しています。 視聴者が「経費精算のクラウド化を検討し始めた」人なので、目的は「比べてもらう」の行になります。 見る場面が無音の縦画面なので、種類はアウトストリームのフィード面、動画は全編テロップの縦型になります。 縦型では一場面に入れる文字を減らし、その分大きく出します。 目的が「比べてもらう」なので、見る指標は完全視聴率とクリック率に絞られ、最後の案内先は申込ページではなくサービス紹介ページになります。
この企画表の「動画に必要なこと」から、NoLangで作った完成動画がこちらです。 縦型9:16で約25秒です。
つきまる精算 経費精算クラウドの広告動画
月末の経費精算に、3日かかっている総務の方へ。 領収書を集めて、入力して、回して。毎月、同じ作業をくり返していませんか。 つきまる精算なら、領収書はスマホで撮るだけ。金額と日付は、自動で入ります。 申請から承認まで画面で完結。月末にまとめて集計する作業が、なくなります。 詳しくは、サービス紹介ページで。
企画表の要件は、動画の各場面に次のように反映されています。 最初の場面は「月末の経費精算に、3日かかっている総務の方へ」の一文を0秒から大きく出し、スクロールを止めた総務担当が自分向けだと分かるようにしています。 二番目の場面では、課題(紙の領収書を集める、表計算に入力、上長に回す)を一つずつ絵と文字で積み上げます。 三番目の場面では違い(スマホで撮るだけ)を、四番目の場面では利点(月末の集計がなくなる)を示し、企画表の順に並べています。 全場面で読み上げる文をそのまま字幕にし、無音でも筋が追えます。 最後の場面は「サービス紹介ページで詳しく」として、目的の行の案内先につないでいます。
制作へ進む:内製と外注
企画表が埋まれば、制作に渡せる条件はそろっています。
内製する場合は、上のテンプレートを開き、自分の企画表の「動画に必要なこと」から場面ごとに書いた台本を入れると、同じ構成で自分の動画になります。 場面ごとの台本の書き方は動画の構成案テンプレートにまとめています。 縦型で作ってYouTubeに投稿する場合の手順はYouTubeショート動画の作り方を参照してください。
外注する場合は、企画表をそのまま制作会社に渡します。 目的・視聴者・見る場面・動画に必要なことが一枚にそろっていれば、提案が返ってきたときに「無音で読める文字になっているか」「冒頭で誰向けかを言っているか」を企画表に照らして確認できます。 制作費の目安は動画制作の費用相場で扱っています。
動画ができたら、媒体の広告管理画面で対象と予算を設定して出稿します。 配信の設定と運用は、出稿する媒体の広告ヘルプに従って進めてください。 最初の2週間が過ぎたら、企画表の「課金と指標」欄に書いた数字を見て、次の動画をどう変えるかを決めます。
まとめ
動画広告で最初に決めるのは、媒体でも形式でもなく、目的です。 知ってもらうのか、比べてもらうのか、申し込んでもらうのか。一つに決めると、形式・媒体・見る指標・動画に必要なことが表の一行に収まります。 企画例の経費精算クラウドでは、「無音の縦画面で見る」という視聴場面に合わせて、全編テロップの縦型という作りと、完全視聴率とクリック率という指標を決めました。 自分の題材でも、目的を一つに決めて表の行を選び、企画表の欄を埋めれば、内製でも外注でも制作に渡せる状態になります。