「PR動画を作ろう」と会議で決まった日、たいてい参加者の頭の中にある動画は一つではありません。 Web担当はサイトのトップに置く動画を、営業は商談の冒頭で見せる動画を、経営層は会社の雰囲気が伝わる動画を思い浮かべていて、同じ言葉で別のものを指しています。 制作に進んでから「思っていたものと違う」となる原因の多くは、撮り方や編集ではなく、ここにあります。
この認識のずれは、PR動画の定義を調べても埋まりません。 誰に見せて、見終わった人に何をしてほしいかを先に決めると、伝える内容も、見せ方も、作り方も決まります。 この記事では、その決め方を企画メモの4項目にまとめ、目的と手元の素材から見せ方を選ぶ表を用意し、架空の一案件を企画メモから完成動画まで通して紹介します。 完成動画はNoLangで作り、同じ構成で自分の案件を作れるテンプレートとして掲載しています。
PR動画とは:似た言葉との違いを、相手と次の行動で整理する
PRはパブリック・リレーションズの略で、本来は組織と社会の間に良い関係をつくる活動を指します。 ただ、日本の企業サイトや制作会社の説明では、企業や商品、サービスの魅力を伝えて興味を持ってもらう動画の総称として「PR動画」が使われ、プロモーション動画とほぼ同じ意味で扱われています。 制作の現場でも、この二つを厳密に区別して設計することはまれで、どちらの言葉で呼ぶかより、その動画を見た人に次に何をしてほしいかで中身が決まります。
同じ理由で、会社紹介動画や商品紹介動画、動画広告との違いも、言葉の定義ではなく「伝える相手」と「見た後にしてほしい行動」で整理すると判断に使えます。
| 動画 | 伝える相手 | 見た後にしてほしい行動 | 主な置き場所 | 詳しく扱う記事 |
|---|---|---|---|---|
| 会社紹介動画 | 取引先、求職者、株主など、会社そのものを知りたい人 | 会社を信頼する、話を聞いてみる | 会社サイト、展示会、説明会 | (本記事で「企業そのものを伝える」場合の判断を扱う) |
| 商品紹介動画 | 特定の商品を検討している人 | 商品の特長を理解して購入を検討する | 商品ページ、店頭、SNS | 商品紹介動画の作り方 |
| サービス紹介動画 | サービスの導入を検討している人 | 使う場面を想像して問い合わせる | サービスサイト、商談、展示会 | サービス紹介動画の作り方 |
| 動画広告 | まだ知らない人、または一度接点のあった人 | 広告枠から目的のページへ進む | 各媒体の広告枠 | 動画広告の種類・媒体・効果 |
| PR動画(本記事) | 案件ごとに決める | 案件ごとに決める。知る、理解する、行動する、信頼する、のどれか | 案件ごとに決める | 本記事。対象が商品やサービス単体に絞られたら、上の各記事へ |
PR動画の行だけ「案件ごとに決める」としたのは、定義をあいまいにしているからではありません。 PR動画は「何を伝える動画か」という対象で分類された名前ではなく、「伝えて関係をつくりたい」という目的を表す名前なので、相手も行動も置き場所も、案件ごとの狙いを整理するまでは定まらないのです。 逆に言えば、相手と行動を決めた時点で、その動画が商品紹介に近いのか、会社紹介に近いのか、広告として出すのかが見えてきます。
CMとの違いも、質問としてよく出ます。 CMはテレビ放送のために作られる15秒や30秒の広告で、放送するたびに費用がかかります。 PR動画は放送を前提にせず、自社サイト、SNS、展示会、商談など置き場所を問わず、一度作れば繰り返し使えます。
企画メモに書く4つのこと:目的・相手・一言・次の行動
目的なら「認知拡大」に決まっている、と思われるかもしれません。 ただ、「認知拡大」と書いた企画メモから動画の中身は決まりません。 誰に何を知ってほしいのか、知った後にどうしてほしいのかが書かれていないからです。 企画メモには、次の4項目を書きます。
目的は、見た人にどうなってほしいかで、4つから一つ選びます。
| 目的 | 見た人にどうなってほしいか | 伝える順番 | 向く長さの目安 | 置き場所の例 | 見る数字の例 |
|---|---|---|---|---|---|
| 知ってもらう | まだ知らない人が、名前と一言を覚える | 一言を先に出し、名前で締める | 15〜30秒 | SNS投稿、サイトのトップ、サイネージ | 再生数、完全視聴率、指名検索の増減 |
| 理解してもらう | 名前は知っている人が、何ができるか、何が違うかを理解する | 相手の課題、それがどう変わるか、の順 | 1〜3分 | サービスサイト、商談前の送付、展示会のブース | 再生時間、遷移後のページ滞在 |
| 行動してもらう | 検討中の人が、申し込みや来場など一つの行動をとる | 行動の理由を一つ示し、最後に行動を一つ置く | 30秒〜1分 | 申込ページ、メール、イベント告知 | 申込数、来場数、行動へのクリック数 |
| 信頼してもらう | 会社の姿勢や取り組みを知り、「この会社なら」と感じる | 背景、取り組み、関わる人の順 | 1〜3分 | 会社サイト、採用サイト、株主向けページ | 滞在時間、問い合わせや応募の質 |
長さの目安は、置き場所と相手の状態で前後します。 一つに絞る理由は、目的によって伝える順番が変わるからです。 知ってもらう動画は一言を冒頭に出して名前で締めますが、理解してもらう動画は相手の課題から始めます。 両方を狙うと、冒頭に何を置くかが決まりません。
相手は、その動画を見る場面まで含めて、一人に決めます。 「30代の女性」では場面が決まらず、「週末に子どもと出かける場所を探して、地域の情報をスマホで眺めている親」なら、無音で見ること、縦にスクロールしていること、最初の数秒でスクロールの手を止めてもらう必要があることまで分かります。 場面が決まると、文字の量や音の扱いが決まります。
一言は、見終わった人が言い直せる一文です。 「〇〇が、△△になる」の形で書くと、相手の何が変わるのかが入ります。 「新しい店ができました」は事実ですが、相手の変化が入っていません。 「週末の午後が、手を動かす時間になる」なら、見た人が誰かに伝えるときの言葉になります。 この一文を先に書いておくと、構成のどの場面も、この一文を支えるために置かれているかどうかで判断できます。
次の行動は、動画の最後に置く一つの行動です。 サイトを見る、オープン日を確かめる、資料を請求する、のどれか一つにします。 二つ置くと迷いが生じ、どちらの行動もとられにくくなります。
この4項目に、見せ方と作り方の判断に使う「使える素材」と「置き場所」を加えた企画メモの枠が次の表です。 記入例は後の企画例の章で示します。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 目的 | 4つから一つ |
| 相手と場面 | 一人に決め、見る場面まで書く |
| 一言 | 見終わった人が言い直せる一文。「〇〇が、△△になる」 |
| 次の行動 | 動画の最後に置く一つの行動 |
| 使える素材 | 手元にある写真、資料、ロゴ、撮影できる場面 |
| 置き場所 | 先に一つ決める |
見せ方を選ぶ:目的と手元の素材で型を決める
PR動画の型としてよく挙がるのは、顧客の課題から解決までを物語で見せるストーリー型、製品を使う場面を見せるデモ型、開発者や利用者が語るインタビュー型の3つです。 どれも有効ですが、どれも撮影を前提にしています。 手元に写真と資料しかない案件では、この3つから選ぼうとした時点で止まります。
型は、目的と手元の素材から選びます。 撮影せずに作れる見せ方も、同じ表の中に置きます。
| 見せ方 | 向く目的 | 必要な素材 | 撮影 | 向く置き場所 |
|---|---|---|---|---|
| 人物が語る(インタビュー、代表のメッセージ) | 信頼してもらう | 語る人、話す内容 | 必要 | 会社サイト、採用サイト、展示会 |
| 使っている場面を見せる(デモ、前後の比較) | 理解してもらう、行動してもらう | 実際の製品や画面、使う場面 | 必要(画面の録画で足りる場合もある) | サービスサイト、商談、商品ページ |
| 写真と文字で伝える | 知ってもらう、行動してもらう | 写真4〜6枚、伝える文、ロゴ | 不要 | SNS投稿、サイネージ、サイトのトップ |
| 資料をそのまま説明する | 理解してもらう | 説明資料(PDF、スライド) | 不要 | 商談前の送付、説明会、社内共有 |
| 短い縦型で一点だけ伝える | 知ってもらう | 写真か短い映像、一言 | 場合による | SNSの縦型面 |
表の右端の置き場所は、先に一つ決めます。 置き場所が決まると、動画の3つの要件が決まります。 長さ(サイネージや投稿なら短く、サイトや商談なら長くてよい)、画面の向き(スマホの投稿なら縦、サイトや展示会のモニターなら横)、そして音がなくても伝わる文字の量(投稿やサイネージは無音が前提)です。 一本の動画を後から別の置き場所にも使いたくなることはありますが、最初の置き場所に合わせて作ったうえで、必要なら縦横や長さを変えた版を作るほうが、どちらにも中途半端な一本を作るより結果が良くなります。 有料の広告枠で見せる場合は、媒体ごとの形式と指標があるので、動画広告の種類・媒体・効果を参照してください。
企画例:企画メモから完成動画まで
ここまでの表を、一つの案件で最後まで使ってみます。 題材は架空で、古い倉庫を改装して開く工房とカフェの複合施設「ツギハギ倉庫」のオープン告知です。
| 欄 | 記入例 |
|---|---|
| 目的 | 知ってもらう。町はずれに新しい場所ができることを、まず知ってもらう |
| 相手と場面 | 週末に子どもと出かける場所を探して、地域の情報をスマホで眺めている30〜40代の親。音を出さずに見る |
| 一言 | 週末の午後が、手を動かす時間になる |
| 次の行動 | オープン日をWebサイトで確かめる |
| 使える素材 | 改装前と改装後の倉庫の写真、工房の作業台の写真、カフェの席の写真 |
| 置き場所 | 施設のWebサイトとSNS投稿 |
目的が「知ってもらう」なので、伝える順番は一言を軸にし、最後を名前と行動で締めます。 相手が無音でスマホを眺めている人なので、画面の文字だけで筋が追える構成にし、ナレーションは付けません。 素材が写真だけなので、見せ方の表では「写真と文字で伝える」の行を選びます。 撮影は不要で、置き場所がWebサイトとSNS投稿なので、長さは30秒前後にします。
この企画メモから起こした構成が次の表です。 構成案の書式そのものは動画の構成案テンプレートにまとめているので、ここでは記入した結果だけを示します。
| 場面 | 役割 | 見せるもの | 画面の文字 |
|---|---|---|---|
| 1 | 場所を見せる | 改装前の古い倉庫の写真 | 町はずれの古い倉庫が、 |
| 2 | 変化を見せる | 改装後の明るい倉庫の写真 | 工房とカフェになりました |
| 3 | 何ができるか | 作業台と削りかけのスプーンの写真 | 木のスプーンを、自分で削る |
| 4 | 何ができるか | カフェの席と焼き菓子の写真 | 削ったあとは、となりでひと休み |
| 5 | 一言 | 作業台とカフェの写真の上に大きな文字 | 週末の午後が、手を動かす時間になる |
| 6 | 案内 | 改装後の倉庫の写真の上に名前と案内 | ツギハギ倉庫/オープン日はWebサイトで |
場面5が企画メモの一言、場面6が次の行動です。 場面1から4は、その一言を支えるために置いています。 場面3と4がなければ、「手を動かす時間」が何を指すのか、見た人には分かりません。
この構成から、NoLangで作った完成動画がこちらです。 横型16:9で約29秒、ナレーションはなく、BGMと画面の文字で進みます。
ツギハギ倉庫 オープン告知のPR動画
添付した4枚の写真で、改装した工房とカフェ「ツギハギ倉庫」のオープンを知らせる横型の動画にしてください。改装前、改装後、作業台、カフェの順に見せ、最後は「週末の午後が、手を動かす時間になる」と「オープン日はWebサイトで」で締めてください。ナレーションは入れず、BGMと文字だけで進めてください。
企画メモの項目は、動画の各場面に次のように反映されています。 場面1と2で改装前と改装後の写真を続けて見せ、場所の変化から話が始まります。 場面3と4で相手の週末の過ごし方を写真と短い文で示し、場面5で作業台とカフェの写真の上に一言を大きく出します。 最後の場面は名前と「オープン日はWebサイトで」で、企画メモの次の行動につないでいます。 ナレーションを付けず、構成の「画面の文字」欄をそのまま各場面に出しているので、無音でも筋が追えます。
上の「このテンプレートで作る」を押すと、この構成が参照動画として選ばれた状態でNoLangが開きます。 自分の案件の写真を添付し、企画メモの一言と次の行動を指示文に入れると、同じ構成で自分のPR動画を作れます。
作り方:撮影する場合と、手元の素材から作る場合
進め方は、決める(企画メモ)、組む(構成)、作る、確かめる、置く、の5段階です。 「決める」と「組む」は前の章で終えているため、この章では「作る」を扱います。
撮影する場合は、構成の場面ごとに必要なカットを撮ります。 明るさと音を一定に保つこと、背景に無関係なものや他社のロゴが映り込んでいないことを撮影中に確認すると、編集での手戻りが減ります。 撮った素材をつなぎ、文字と音楽を載せ、置き場所に合わせた長さと向きで書き出します。
手元の写真や資料から作る場合は、NoLangで次の順に進めます。
参照動画を選んで始める
上の企画例の「このテンプレートで作る」を押すと、その動画が「参照動画」として入力欄の上に表示された状態でホームが開きます。 この状態で進めると、参照動画の構成と見た目を引き継いで、自分の内容に合わせた動画を作れます。 参照動画を使わずに作る場合は、そのままホームの入力欄から始めます。

指示文か台本を入れる
入力欄に、企画メモの一言と次の行動を含む指示文を入れます。 構成を場面ごとに書いてある場合は、入力欄の下の「台本から」を押し、その台本をそのまま貼り付けます。 説明資料がある場合は「資料から」を選び、PDFやPowerPointのファイルを指定します。
写真とロゴを添付する
入力欄の「+」(追加設定・添付)から「ファイルをアップロード」を選び、構成で使う写真とロゴを添付します。 どの写真をどの場面に使うかは指示文に書きます。

画面の向きと言語を決める
入力欄の「横型」を押すと、横型(16:9)、縦型(9:16)、1:1などの向きを選べます。 置き場所に合わせて選びます。 言語は「+」の「動画の言語」で選びます。おまかせのままなら、指示や参照動画から判断されます。

生成して、直す
生成後に「編集する」で編集画面を開きます。 画面上の文字や画像は、右端のタイムラインの「テキスト」「画像・動画」から差し替えます。 ナレーションを入れた場合は、右側の「読み上げ台本」で場面ごとの文を直します。 企画メモの一言が入る場面の文字が大きく出ているか、最後の案内が一つになっているかを確認します。

確定する
直し終えたら「この内容で確定する」で動画を仕上げ、置き場所に置きます。
内製するか外注するかは、3つの基準で判断します。 更新の頻度(SNS投稿のように月に何本も作るなら内製、年に一本の会社紹介なら外注でもよい)、撮影の要否(人物が語る動画や実際の場面が必要なら、撮影と編集を外注する選択肢がある)、承認の重さ(経営層や取引先の確認が多い動画は、第三者の目が入る外注が向く)です。 外注する場合も、企画メモがあれば、返ってきた提案が一言と次の行動に沿っているかを照らし合わせて確認できます。 費用の目安は動画制作の費用相場で扱っています。
公開前に確かめる3つのこと
動画ができたら、企画メモに戻って三つを確かめます。
一つめは、一言が伝わるか。 動画を見ていない同僚に一度だけ見せて、何の動画だったかを一言で言ってもらいます。 企画メモの一言に近い言葉が返ってくれば、構成は機能しています。
二つめは、相手の場面で成り立つか。 企画メモの場面が「無音でスマホ」なら、音を消してスマホで再生します。 文字だけで筋が追えなければ、文字を増やすか、場面を減らします。
三つめは、次の行動が最後に一つだけ示されているか。 最後の場面に行動が二つ以上あれば、一つに減らします。
このほかに、社名や商品名の表記と文字の誤りを確認し、ナレーションを入れた場合は読み上げと音楽の音量の釣り合いも確認します。 これらは制作の確認で、企画の確認とは分けて行います。
まとめ
会議で「PR動画を作ろう」と決まったとき、参加者の頭にある動画がばらばらなのは、PR動画という言葉が中身を決めないからです。 決めるのは、企画メモの4項目です。 目的を4つから一つ選び、相手を見る場面まで含めて一人に決め、見終わった人が言い直せる一言を書き、最後に置く行動を一つ決めます。 ここまで書けば、見せ方は目的と素材の表から選べ、作り方は撮影の要否で決まり、公開前の確認も企画メモに戻るだけで済みます。 企画例のツギハギ倉庫では、写真4枚の素材から、撮影せずに約29秒の動画になりました。 自分の案件でも、企画メモの4項目を先に埋めるところから始めてください。