「動画広告はいくらかかるのか」と聞かれて、すぐに数字で答えるのは難しいものです。 検索すると「1再生3〜20円」「月10万円から」といった数字が並びますが、同じ指標でも記事によって数倍の開きがあります。 Web上の動画広告には、決まった料金表がないからです。
動画広告の費用は、媒体に払う配信費と、動画そのものを作る制作費に分けると整理できます。 配信費は「単価×回数」で、単価はオークションで決まり、回数は自分で決めます。 制作費は、配信費とは別に動画1本ごとにかかります。
この記事では、CPM・CPV・CPCの違い、媒体ごとに異なる「1回の視聴」の数え方、相場の数字の読み方、予算を組む2つの計算式、制作費が増える条件を順に説明します。 媒体や形式の選び方から知りたい場合は、先に動画広告とはを読むと流れがつかめます。
動画広告の費用は「配信費」と「制作費」に分かれる
動画広告の見積もりや予算を考えるときは、まず費用を性質の違う二つに分けます。
| 費用 | 払う先 | かかり方 | 金額を決めるもの |
|---|---|---|---|
| 配信費(広告費・媒体費) | YouTube・Meta・TikTokなどの媒体 | 配信した分だけ。日や月の予算で上限を決める | 課金方式、単価、回数 |
| 制作費 | 制作会社、社内の人手や制作ツール | 動画1本ごと。配信の前にかかる | 本数、尺、縦横の比率、作り込み |
| 運用の手数料(任せる場合) | 広告代理店・運用会社 | 契約による | 料率と、何をもとに計算するか |
配信費は、広告を出している間ずっと発生し、予算を増やせば増え、止めれば止まります。 制作費は、配信を始める前にまとめてかかり、配信量を増やしても増えません。 この二つを一つの「動画広告費」としてまとめてしまうと、配信を増やすべきか、動画を作り直すべきかの判断がつかなくなります。
なお、「YouTubeで1再生いくら入るか」という話は、動画の投稿者が受け取る広告収益のことで、広告主が払う配信費とは別の話です。 テレビCMの放送枠の料金も、この記事で扱うWeb上の動画広告とは仕組みが異なります。
動画広告の単価:CPM・CPV・CPCの違い
配信費の単価は、何に対して料金を払うかで決まります。 動画広告で使われる課金方式は、主に次の三つです。
| 課金方式 | 料金が発生するとき | 配信費の計算 | 向く目的 |
|---|---|---|---|
| CPM(インプレッション単価) | 広告が表示されたとき。1,000回表示あたりの単価で表す | CPM × 表示回数 ÷ 1,000 | 多くの人に知ってもらう |
| CPV(広告視聴単価) | 広告が決められた時間以上見られたとき | CPV × 視聴回数 | 内容を見てもらう |
| CPC(クリック単価) | 広告がクリックされたとき | CPC × クリック数 | サイトに来てもらう、申し込んでもらう |
同じ広告でも、課金方式が違えば、何に対して料金を払うかが変わります。 たとえばYouTubeのスキップできる広告をCPVで出すと、30秒見られる前にスキップされた表示には料金がかかりません。 CPMで出すと、スキップされた表示も1回の表示として数えられます。 「CPMは安い、CPVは高い」と単価の数字だけを比べても意味がないのはこのためです。
もう一つ紛らわしいのが、「コンバージョン単価(CPA)」を目標にする設定です。 TikTokの最適化インプレッション課金(oCPM)のように、申し込みが起きやすい人に配信を寄せる設定でも、料金はインプレッションごとに発生します。 Metaの広告も、作成時に特に指定しなければインプレッション数に基づいて請求されます。 CPAは「1件の成果にいくらまでかけるか」という目標や結果の指標で、払う単位とは分けて考えます。
「1回の視聴」の数え方は媒体ごとに違う
CPVの「1回」は、媒体によって基準が違います。 主な媒体の公式ヘルプに書かれている条件は次のとおりです(2026年10月時点)。
| 媒体・形式 | 「1回の視聴」として料金が発生する条件 |
|---|---|
| YouTube:スキップ可能なインストリーム広告 | 30秒見られたとき(30秒未満の広告は最後まで)、または広告が操作されたとき |
| YouTube:インフィード動画広告 | サムネイルがクリックされて再生されたとき、または自動再生で10秒以上見られたとき(10秒未満の広告は最後まで) |
| YouTube:ショート広告 | 10秒見られたとき(10秒未満の広告は最後まで)、またはリンクのボタンが押されたとき |
| Meta(Facebook・Instagram):ThruPlay | 15秒以上再生されたとき(15秒未満の動画は97%再生されたとき)。ThruPlayに対する課金を選んだ場合 |
| TikTok:CPV | 6秒以上見られたとき、6秒以上の広告が早送りで見られたとき、最初の6秒の間に操作されたときのいずれか |
| LINEヤフー広告:動画再生課金 | 一定の秒数見られたとき。秒数は配信先の媒体によって異なる |
出典:Google 広告ヘルプ「YouTube の広告視聴単価制について」、Metaビジネスヘルプセンター「ThruPlayについて」、TikTok広告マネージャー「入札方法」、LINEヤフー for Business「ディスプレイ広告(運用型)」。
YouTubeのスキップできる広告の「1回」は30秒、TikTokは6秒です。 同じ「CPV 10円」でも、前者は30秒の視聴1回に払う10円、後者は6秒の視聴1回に払う10円で、買っているものが違います。 媒体をまたいでCPVを並べて安い方を選ぶのではなく、同じ媒体・同じ形式の中で、前回の配信や別の動画と比べるのが基本です。
YouTubeのバンパー広告(6秒)やスキップできない広告は、視聴ではなく表示回数で課金されます。 同じYouTubeでも、形式によって課金のしかた自体が変わる点に注意してください。
動画広告の単価の相場は、どう読めばよいか
媒体は単価の相場を公表していません。 単価は、広告を出したい広告主どうしのオークションで、入札額や広告の関連性、配信する相手の条件によって決まるからです。 Google広告の公式の案内も「キャンペーン費用を自由に設定できます」という説明で、金額の目安表はありません。
検索で見つかる相場の数字は、多くが広告代理店や制作会社の記事が示す目安です。 同じ指標で、各社の記事が示す値を並べると次のようになります(2026年10月5日に各記事で確認)。
| 指標 | 記事が示す値 | 記事 |
|---|---|---|
| YouTubeのスキップ可能な広告のCPV | 4〜7円前後 | 株式会社ストリート(2025年12月更新) |
| 同上 | 3〜15円程度 | 株式会社IMK Re-Nect「動画広告の配信単価はいくら?」 |
| 同上 | 3〜20円 | 株式会社IMK Re-Nect「YouTube広告の費用相場」 |
| 同上 | 約2〜25円 | 楽天グループ(2026年3月) |
| FacebookのCPM | 100〜500円前後 | 株式会社ストリート |
| 同上 | 400〜800円 | Ad-Virtua(2026年版) |
| 同上 | 1,000〜3,000円 | StockSun(2026年9月更新) |
同じ会社の二つの記事でも値が違い、FacebookのCPMは記事によって10倍以上の開きがあります。 どの記事も、数字の出典やどの条件での値かを示していません。 こうした数字は、桁の感覚をつかむ材料にはなりますが、そのまま予算の根拠にはできません。
相場の数字を見るときは、次の点を確かめます。
- 媒体と形式:YouTubeでも、スキップ可能な広告とバンパー広告では課金方式が違います。
- 課金方式と「1回」の基準:CPVなのかCPMなのか、何秒で1回なのか。
- 時期:いつの値か。単価はオークションの競争状況によって変わるため、時点の違う数字はそのまま比べられません。
- 配信する相手:年齢・地域・興味などの条件。媒体の見積もりも、予算や入札額と並んで配信する相手の条件をもとに計算されます。
自社の単価は、後で説明するように、媒体の見積もり機能と少額の配信で確かめるのが確実です。
予算の組み方:2つの計算式
予算は、目的に合わせて次のどちらかの式で組み立てます。 以下の計算例の単価は、計算の手順を示すための数字で、相場ではありません。
回数から組む:単価×回数
知ってもらう、見てもらうことが目的なら、届けたい回数から計算します。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 届けたい回数 | 表示20万回 |
| 単価 | CPM 500円 |
| 配信費 | 500円 × 200,000回 ÷ 1,000 = 10万円 |
視聴を目的にCPVで出すなら、「視聴1万回 × CPV 10円 = 10万円」のように、視聴回数と単価を掛けます。
成果から組む:目標の獲得単価×件数
申し込みや購入が目的なら、1件にかけてよい金額と件数から逆算します。 LINEヤフー for BusinessのLINE広告の料金と予算の考え方でも、予算の目安を「1件の獲得に費やしてもいい金額」と「獲得したい成果数」の掛け算で求める方法が紹介されています。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| 1件にかけてよい金額 | 5,000円 |
| 月に欲しい件数 | 20件 |
| 配信費 | 5,000円 × 20件 = 月10万円 |
1件にかけてよい金額は、1件の申し込みから見込める売上や利益をもとに決めます。 この金額が決まっていないと、配信の結果が良いのか悪いのかも判断できません。
月の予算を日の予算に直す
多くの媒体では、予算を1日単位か期間の合計で設定します。 Google広告の場合、1日の平均予算は「月の予算 ÷ 30.4(1か月の平均日数)」で求めます。 月10万円なら、1日あたり約3,290円です。 Google広告では、特定の日に1日の平均予算の最大2倍まで使われることがありますが、1か月の請求は1日の平均予算の30.4倍までに収まります(Google 広告ヘルプ「1 日の平均予算について」)。
最低いくらから出せるか
最低予算の決まりは媒体ごとに異なります。
| 媒体 | 最低予算・最低入札額 |
|---|---|
| Google広告(YouTube) | キャンペーン費用は自由に設定できる |
| Meta | 最小予算は国や目的、入札戦略などによって変わり、下回ると広告マネージャに通知が出る |
| TikTok | キャンペーン単位で50米ドル、広告セット単位で20米ドル |
| LINEヤフー広告(ディスプレイ広告・運用型) | 最低出稿金額はない |
最低予算で配信できても、それで判断できるだけの結果が集まるとは限りません。 LINEヤフー for Businessは、配信の最適化に必要なデータの目安を「30日間で40件」としています。 成果から組む式で出した予算が、こうした目安の件数を集められる額かどうかも確かめておきます。
自分のアカウントで単価を見積もる
相場の数字より確かなのは、自社の条件で媒体が出す見積もりと、実際に配信した結果です。
主な媒体には、配信前に結果を予測する機能があります。
- Google広告:リーチ プランナー。YouTubeと動画パートナーで、予算や配信する相手、広告フォーマットを選ぶと、リーチ・TrueView 視聴回数・コンバージョンの推定値が出ます。利用できるアカウントは段階的に拡大中で、地域によっては使えません(リーチ プランナーについて)。
- Meta:広告を作成する画面で、予算・入札価格・ターゲット設定をもとにしたリーチと結果の推定値が表示されます(Metaのテクノロジーでの広告の費用)。
- TikTok:推定配信結果。対象の目的では、入札額や予算を変えたときのコストやインプレッション数の予測が表示されます(推定配信結果について)。
推定値はあくまで目安です。Googleは成果を保証するものではないと明記し、TikTokも実際の結果はオークションの状況や設定、利用者の行動によって変わると説明しています。 推定値で予算の桁を決めたら、少額で一定期間配信し、実際のCPM・CPV・CPCを管理画面で確かめます。 その実績の単価を、上の計算式に入れ直して本番の予算を決めると、根拠のある見積もりになります。
制作費:広告用の動画で費用が増える要因
制作費は、動画1本をどう作るかで大きく変わります。 依頼先別・種類別の金額の目安は動画制作の費用相場にまとめているので、ここでは広告用の動画で本数が増え、制作費が膨らみやすい要因を挙げます。
- 縦横の比率:横型の枠と、ショートやリール、TikTokのような縦型の枠の両方に出すなら、比率違いの版が必要になります。
- 尺:6秒のバンパー広告と30秒のインストリーム広告では、同じ内容でも構成から作り直すことになります。
- 訴求違い:どの切り口で反応が得られるかは配信してみないと分からないため、冒頭や訴求を変えた複数の版を用意し、配信結果を比べることがあります。
- 差し替え:配信の結果を見て、冒頭や文字を直した版を作ることがあります。
配信費の予算を考えるときに、制作費も「1本いくら」だけでなく「何本・何版が必要か」で見積もると、後から追加の制作費で予算が膨らむのを防げます。
社内で作る方法もあります。 次の動画は、この記事の要点を約1分の解説動画にまとめたもので、NoLangで作りました。 予算を社内で説明するときの資料としても使える構成です。
動画広告の費用の解説動画
動画広告の費用を配信費と制作費に分けて説明する、1分ほどの社内向け解説動画にして。 課金方式(CPM・CPV・CPC)、「1回見られた」の基準の違い、単価×回数の計算例、制作費は本数分かかることを入れて。
動画は、冒頭で「動画広告の費用」を二つの「?」に分けて問いかけ、最後に「動画広告の費用=配信費+制作費」の式で締めくくる構成です。 途中では、三つの課金方式をカードで並べ、YouTubeの30秒とTikTokの6秒を同じ目盛りの棒で比べ、「単価×回数」の式に500円と20万回を当てはめて10万円になる計算を示します。 制作費の場面では、縦型・横型と訴求A・Bの組み合わせで4本が必要になる例を示しています。
この動画はテンプレートになっていて、「このテンプレートで作る」から自分の台本や伝えたい内容を入れると、同じ構成の動画を作れます。 縦型が必要になったときは、作った動画の比率を変えた版も作れます。 訴求違いや比率違いの版を社内で用意できれば、制作費のうち「本数」で増える部分を抑えられます。
見積もり・予算表で確認する項目
最後に、動画広告の予算を社内で説明したり、代理店や制作会社の見積もりを比べたりするときに確認する項目をまとめます。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 目的 | 知ってもらう、見てもらう、申し込んでもらうのどれか(目的によって予算の計算式が変わる) |
| 媒体と形式 | どの媒体の、どの形式(インストリーム、ショート、フィードなど)に出すか |
| 課金方式 | CPM・CPV・CPCのどれか。CPVなら「1回」の基準は何秒か |
| 単価の根拠 | 媒体の見積もり、過去の配信実績、記事の目安のどれに基づく数字か |
| 期間と日の予算 | 配信する期間と、1日または期間合計の予算 |
| 本数と版 | 動画の本数、縦横の比率、尺、訴求違いの版の数 |
| 制作費 | 1本あたりの費用と、修正・差し替えの扱い |
| 運用の手数料 | 運用を任せる場合の料率と、媒体費・制作費のどちらをもとに計算するか |
| 税 | 見積もりの金額が税込か税抜か |
この表が埋まっていれば、「いくらかかるのか」と聞かれたときに、配信費と制作費を分けて、根拠と一緒に答えられます。
まとめ
動画広告の費用は、配信費と制作費に分けて考えます。 配信費は「単価×回数」か「目標の獲得単価×件数」で組み立て、単価はCPM・CPV・CPCのどれで払うか、媒体が何を「1回」と数えるかで意味が変わります。 相場の数字は記事によって大きく違い、出典もないことが多いので、媒体の見積もり機能と少額の配信で自社の単価を確かめてから本番の予算を決めます。 制作費は動画1本ごとにかかり、比率違い・尺違い・訴求違いの版が増えるほど膨らむので、本数まで含めて見積もりましょう。
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